クロとシロと、時々ギン

砂浜の結婚式(7)

 そのせいで挙式を諦めてしまう潜在顧客がいるのではないか。
 挙式にかかる費用を抑えられて、なおかつ、挙式そのものに付加価値をつけることはできないか。
 私たちはそう考え、今回の体験型挙式に辿り着いた。

 賑やかな立食パーティーの様子を見る限り、ゲストたちも楽しんでいるようだ。
 今回の企画は概ね成功したのではないかと、私はひとまず安堵した。
 とはいえ、まだ気は抜けない。披露宴はまだ続くのだから。

 会場の様子にそれなりの手ごたえを感じていると、会場の隅から歓声が上がった。
 お色直しを終えた新郎新婦が戻ってきたのだ。新郎は真っ白なタキシード、新婦は純白のミニ丈ウェディングドレス。
 会場が拍手に包まれる中、二人は揃ってお辞儀をし、ゲストに応える。その後、新郎新婦はゲストの間を歩き、楽し気に言葉を交わす。
 立食パーティーも随分と盛り上がってきた頃、司会の合図で、会場の中央にスペースが作られた。
 そこ運び込まれたのは大きなハート型のチョコレートケーキ。ケーキ入刀だけはどうしてもやりたいという新婦の強い希望を叶えたものだ。
 ケーキを囲むゲストたちから拍手が湧き起こる。

「それでは皆さん、準備はいいですか? せーの!」

 一斉にシャッター音が響く。
 新郎新婦がゲストに囲まれながらケーキ入刀している様子を少し離れた場所から眺めていると、ふいに私の名前が呼ばれた。振り返ると、管理部の三嶋さんが立っていた。

「八木さん、明日花さん、お疲れ様です。大成功ですね」
「ああ、三嶋さん、お疲れ様です」

 私とシロ先輩は頭を下げた。
 三嶋さんはにこっと微笑む。しかしそれは一瞬で、すぐに真剣な表情へと変わった。

(なんだろう。良くない話だろうか)

 身構えた瞬間、思いがけない言葉が飛び出した。

「実は先ほど、プランナー部から連絡がありまして。一件、キャンセルになりそうだと……」

 挙式を予定していたカップルから急にキャンセルの申し出があったらしい。理由を聞くと、花嫁のお腹に新しい命が宿ったとのことだった。
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