アンコールはリビングで
(……まじか)

俺の頭の中で、危険信号がガンガンと鳴り響き始めた。

もし俺がこのオファーを断ったら。
当然、他の人気の若手イケメン俳優とかが、この役を演じることになる。

そして、この作品の大ファンである凪は、毎週テレビの前に座り、そのイケメン俳優が演じる朔斗にキュンキュンして、「かっこいい……っ!」と黄色い声を上げるのだ。

(……んなこと、絶対許さねぇ)

俺以外の男に、画面越しであっても凪が惚れるなんて、1ミリだって許せるわけがなかった。

俺は凪を抱きしめたまま、空いている方の手でスマホを取り出した。

「……もしもし、島崎さん。早瀬です。あのドラマのオファー、受けます」

『えっ!? 本当に!? あんなに嫌がってたのに、急にどうしたの!?』

「……ちょっと、どうしても俺がやるしかないっていう『不純な動機』ができたんで。じゃ、よろしくお願いします」

電話を切り、俺は呆然としている凪の頬にそっと手を添えた。

「み、湊……? 音楽一筋なのに、本当にやるの?」

「おう。凪がそんなにそのキャラ好きなら、他の俳優にやらせるわけにはいかねぇだろ」

俺は彼女の唇に、触れるだけの甘いキスを落とした。

「……画面越しでも、俺以外の男に惚れるとか、絶対許さねぇからな。……凪の推しも本命も、全部俺が独占する」

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