アンコールはリビングで
4. エンドロールは車内で

レストランを後にした私たちは、再びGクラスに乗り込んだ。
帰りの車内は、行きよりもずっと甘く、穏やかな空気が流れていた。

信号が赤に変わり、車が静かに止まる。

ふと、湊がこちらを見た。
街灯の光が、彼の優しい瞳を照らしている。

「……凪」

「ん?」

「来年も、再来年も……こうやって美味いもん食いに行こうな」

彼が前方を見据えたまま言った。

それは、遠回しだけど、確かな未来の約束。

「……うん。絶対ね」

私が微笑むと、彼はそっと私の左手を取った。
そして、その薬指の付け根に、恭しく口づけを落とした。

指輪のないその場所に、まるで「予約」をするかのように。

「……今はまだ、ネックレスで我慢しとけよ」

彼が低く囁く。
その言葉の意味を理解した瞬間、私の顔は火がついたように熱くなった

信号が青に変わる。

スピーカーから流れるバラードと、流れる東京の夜景。

アンコールはずっと続いていく。
最高に幸せなバレンタインの夜は、二人の家へと続く道の上で、静かに更けていった。
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