メンヘラちゃんとヤンデレくん!?
始まりは放課後
放課後の教室は、思っていたより静かだった。
夕焼けが窓から差し込んで、机の影がやけに長い。

「月城さん」

呼ばれて、心臓が跳ねた。
振り向くと、そこに立っていたのは黒瀬怜だった。

成績優秀で、無口で、優しい。
それでいて、どこか近寄りがたい人。

――なんで、私に。

「ちょっと、話せる?」

逃げる理由なんて見つからなくて、私は小さくうなずいた。

教室に二人きりになると、空気が急に重くなる。
机に置いた手が震えているの、きっと怜くんにも見えてる。

「前から……月城さんのこと、見てた」

その一言で、頭が真っ白になった。

「俺、月城さんが好きだ」

あまりにも真っ直ぐで、静かな声。
冗談にも聞こえなくて、胸がぎゅっと苦しくなる。

嬉しい、はずなのに。

「……私、重いよ?」

反射的に口から出た。
今までそれで、何度も振られてきたから。

「依存しちゃうし、相手の全部欲しくなるし……きっと、すぐ嫌われる」

俯いたまま言うと、少し間が空いた。

拒絶される。
そう思った瞬間――

「それでいい」

怜くんは、迷いなく言った。

「俺も、軽い付き合いはできないから」

顔を上げると、彼は笑っていた。
でもその笑顔は、優しいのに、どこか張り付いたみたいで。

「月城さんの全部、俺が受け止めるよ」

――逃げ道を、最初から塞がれるみたいな言葉。

なのに、胸の奥がじんわり熱くなった。

「……本当に、後悔しない?」

そう聞くと、怜くんは一歩近づいてきて、低い声で囁いた。

「後悔するのは、月城さんが俺から離れようとした時だけ」

その瞬間、背中にぞくりとしたものが走った。

優しい告白。
でも、その奥に潜む何かに、私はまだ気づかないふりをした。

「……よろしく、お願いします」

そう答えた私を見て、
黒瀬怜は、満足そうに微笑んだ。

――まるで、ずっと待っていたみたいに。
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