シトラスの魔法が解けるまで
瀬戸の顔が、一瞬で真っ赤に染まる。
「……っ、ふざけんな。行くぞ」
彼は吐き捨てるように言うと、昨日と同じように、私に背を向けた。
(また……また逃げるの!?)
思考より先に、体が動いていた。
逃げていく彼の背中。テニス部の、鮮やかな青色のウインドブレーカー。
その袖口を、私は両手で思いきり掴んだ。
「……っ、離せよ!」
低い声。グイッと腕を引く、テニスで鍛えられた強い力。
私の細い指なんて、本気を出せば一瞬で振り払えるはずなのに。
ナイロンの生地がギュッと音を立て、私の指先に彼の体温が伝わってくる。
「……嫌。離さない」
声が震える。でも、指には力を込めたまま。
ここで手を離したら、私は一生、この青い背中を追いかけ続けることになる。
一年前のあの日の後悔も、言えなかった「ごめんね」も、会えなかった間の孤独も。
全部、この指先に凝縮させて、彼の体温にぶつけた。
必死だった。
周りで冴や真柴くんが見守っていることも、もうどうでもいい。
ただ、目の前のこの「青」を、二度と手放したくない。その一心だった。
「……っ、ふざけんな。行くぞ」
彼は吐き捨てるように言うと、昨日と同じように、私に背を向けた。
(また……また逃げるの!?)
思考より先に、体が動いていた。
逃げていく彼の背中。テニス部の、鮮やかな青色のウインドブレーカー。
その袖口を、私は両手で思いきり掴んだ。
「……っ、離せよ!」
低い声。グイッと腕を引く、テニスで鍛えられた強い力。
私の細い指なんて、本気を出せば一瞬で振り払えるはずなのに。
ナイロンの生地がギュッと音を立て、私の指先に彼の体温が伝わってくる。
「……嫌。離さない」
声が震える。でも、指には力を込めたまま。
ここで手を離したら、私は一生、この青い背中を追いかけ続けることになる。
一年前のあの日の後悔も、言えなかった「ごめんね」も、会えなかった間の孤独も。
全部、この指先に凝縮させて、彼の体温にぶつけた。
必死だった。
周りで冴や真柴くんが見守っていることも、もうどうでもいい。
ただ、目の前のこの「青」を、二度と手放したくない。その一心だった。