島江凪は、二度恋をする。 ~飛べない鳥に、恋の歌~ ※改稿版

再びふくろうハウスへ

 
「この家、まだなんとか使えそうで助かったな」
 
 パパの声を聞いてウチは目を覚ましした。
 そう、ハイタカに襲われ、なんとかみんなに助けられたあと、パパとママの手を借り、懐かしい『ふくろうハウス』に潜り込んだンダ。
 
 暗く狭い穴の中で、パパとママがウチの両側から身を寄せる。ママが傷跡を優しく撫でる。傷口がどうなっているのか、わからナイ。
「赤ちゃんの時みたいに、食べ物はいっぱい持ってきてやるからな。とにかく今はゆっくり休みなさい」
 パパがくちばしでウチの頭を軽く撫でタ。
 
 その頭にポタリと雫が落ちてキタ。見上げると、巣の入口に四番目の女の子、シズクの姿が見えタ。
「ナギネエ、ほんとごめんなさい。戻れって言われたのに、アタシが自分勝手なことばっかりして……」
 そう言ってシズクは再び涙の雫を落とした。
 上を向き、涙の主に呼びかけル。
「いいノダ、シズク。これがお姉ちゃんの役目なんだカラ」
「アタシが……アタシがやられればよかったのに」
「コラシズク。そんなことはいうではナイ。こうやって助け合いながらウチたちシマエナガは生き延びてこられたのだカラ」
 
  〇
 
 パパやママ、兄弟姉妹たちが、動けないウチに代わって食べ物を見つけ、ふくろうハウスに届けてくれる。こんな状態でもウチの食欲は落ちないのがアリガタイ。
 
 
 
 わかってイル。
 
 きっと家族も、わかってイル。
 
 
 ウチはこのまま、ふくろうハウスと一緒に朽ちて、消えてしまうことを。
 ダッテ、こうやって誰かが犠牲になって、ウチたちは、命をつないで来たんだから。
 
 ナンデ、ウチには兄弟姉妹がいっぱいいるのか?
 それは、誰かが死ぬ代わりに、誰かが生き延びるタメ。
 ウチが死んでも、シズクが生き残ってくれる。
 
 ダカラ。
 
 ただただ、パパとママが……シマ(長女)が、ユキ(二女)が、イブキ(長男)が、ソラ(二男)が、アオバ(三男)が、リク(四男)が、そしてシズク(四女)が……天敵に襲われないで、嵐や吹雪に巻きこまれないで生き延びてくれることを望む……ノゾム。
 
 だんだん、起きているのカ、眠っているのカ、生きているのカ、それとも、もう死んでしまっているのカ、わからなくナル。
 
 だから、それが夢ナノカ、なんナノカ、わからないけど、ウチの心に思い出の映像が浮かぶ。
 
 広がる初夏の空。甘い風の匂い。見下ろすと、ニンゲンの男の子が、仲間の元に走っていく。時々、ウチを振り返ル。
 
「ありがとう!」って言って、手を振った。そして笑顔。
 
 ウチみたいな鳥も、死んだらニンゲンに生まれ変わることはできるのだろうカ?
 
 そういうのもいいナ。
 ニンゲンの世界で暮らすのもいいナ。
 
「お~い、コウイチー」
 仲間からそう呼ばれていた。
 
 
「お~い、コウイチ」
 
 
 ウチもそう呟いてみた。
 
 あの子に会いタイ。
 祈りながら、願いながら、目を閉じル。
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