元恋人と、今日から同僚です
 家に帰って、シャワーを浴びて、ベッドに横になる。
 天井を見つめながら、今日のことを振り返った。

 朝倉と同じ案件。
 これから何週間も、密に仕事をすることになる。
 打ち合わせ、撮影、原稿チェック。
 顔を合わせる機会が、嫌でも増える。

 耐えられるだろうか。
 平気なふりを続けられる、だろうか。

 「俺がいることで、やりにくくなるのは本意じゃない」

 朝倉の言葉を思い出す。
 あの言い方は、まるで——私に気を遣っているようだった。
 告白を断った私のことを、考えてくれている。

 五年前も、そうだった。
 私のことを心配して、もっと休めと言った。身体を壊すと言った。
 それを、私は拒絶した。

 同じことを、また繰り返すんだろうか。
 朝倉の気遣いを、また突っぱねるんだろうか。

 わからない。
 自分が何をしたいのか、どうすればいいのか、全然わからない。

 スマホを手に取る。
 LINEを開く。朝倉とのトーク画面。
 既読をつけていないメッセージが、まだ残っている。

 『今日の会議、本当にすみません。言い方がきつかったです』

 あれから、朝倉は何もメッセージを送ってきていない。
 私が拒否したから。私が壁を作ったから。

 指が、画面の上で止まる。
 何かを打とうとして、やめた。

 今さら、何を言えばいいんだろう。
 「あの時はごめん」、「気にしてない」
 違う。どれも、本心じゃない。

 スマホを枕元に置いて、目を閉じた。

 明日も、朝倉と顔を合わせて、仕事の話をする。
 それだけの関係。
 それ以上でも、それ以下でもない。

 そう思っているのに、眠れない夜が続いている。
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