元恋人と、今日から同僚です
 何か返すべきだろうか。「こちらこそ」?「頑張ろう」?

 結局、私は短く返信した。

 『よろしく』

 それだけ打って、スマホを置いた。

 明日は、長い一日になる。
 朝倉と一緒に過ごす、長い一日。

 不安と期待が入り混じった気持ちで、私は目を閉じた。
 明日、朝倉のどんな顔が見られるんだろう。
 仕事モードの朝倉。真剣な朝倉。笑っている朝倉。

 全部、見たいと思っている自分がいた。

 それが何を意味するのか、考えないようにして、眠りについた。



 金曜日の朝。

 撮影当日。私は六時に起きて、念入りに準備をした。
 現場では何が起こるかわからない。
 トラブルに対応できるよう、頭をクリアにしておく必要がある。

 コーヒーを飲みながら、スケジュールを最終確認。
 モデルの到着時間、ヘアメイクの段取り、撮影カットのリスト。すべて頭に入れた。

 七時過ぎに家を出る。
 電車の中で、朝倉からLINEが来た。

 『現地着きました。スタジオ前にいます』

 時計を見ると、七時二十分。集合時間より十分も早い。
 私より先に着いているとは。

 『了解。もう少しで着く』

 短く返して、スマホをしまった。

 駅に着き、スタジオに向かう。
 入口で朝倉が待っていた。

「おはようございます」
「......おはよう。早いね」
「緊張して、早く目が覚めちゃって」

 朝倉が少し照れくさそうに笑った。緊張しているのがわかる。
 そして、その顔は嫌いじゃなかった。
 真剣に仕事に向き合っている証拠だから。

「じゃあ、始めよう。今日一日、よろしく」
「はい。よろしくお願いします」

 スタジオの扉を開ける。

 長い一日が、始まった。
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