元恋人と、今日から同僚です
 家に帰って、シャワーを浴びて、ベッドに横になる。
 天井を見つめながら、今日のことを振り返った。

 朝倉に、距離を置きたいと言った。
 受け入れてくれた。「待つ」と言ってくれた。

 優しい人だ。私がこんな態度を取っても、怒らない。
 責めない。ただ、待つと言う。
 
 その優しさが、重い。
 そして、応えられない自分が情けない。

 スマホを手に取り、朝倉のLINEを開く。
 何か送ろうか、と思った。

 「ごめん」とか、「今日はありがとう」とか。

 でも、指が動かない。
 何を送っても、言い訳じみたものになりそうだった。

 結局、何も送らずにスマホを置いた。

 明日から、どうしよう。
 仕事では顔を合わせる。でも、仕事以外では話さない。
 そんな関係が、いつまで続くんだろう。

 答えは、出ない。
 出ないまま、目を閉じた。

 朝倉の顔が浮かぶ。
 「待つ」と言った時の、穏やかな表情。
 「わかりました」と言った時の、悲しそうな目。

 私は、朝倉を傷つけている。
 わかっている。わかっているのに。

 自分の弱さが嫌になる。
 逃げることしかできない。そんな自分が情けない。

 冷却期間。
 そう思うことにした。
 少し距離を置いて、頭を冷やして、ちゃんと考える。そのための時間だと。

 言い訳かもしれない。
 でも、そう思わないとやっていけなかった。
 これから、また、眠れない夜が続くのかな。

 今日も、長い夜になりそうだった。
< 72 / 112 >

この作品をシェア

pagetop