記憶の欠片
ドアを開けると、コーヒーの香ばしい匂いがふわっと広がる。
店内は落ち着いた音楽が流れていて、外の寒さが嘘みたいに暖かい。
……ここなら、少しだけ、息ができそう。
私はそう思いながら、静かに席に腰を下ろした。
カウンター席に腰を下ろすと、そこには三湊くんがいた。
エプロン姿で、いつもより少し大人っぽく見える。
周りを見渡すと、近くの席には誰もいない。
静かな店内で、コーヒーを淹れる音だけが響いている。
私はカウンターに視線を落としたまま、ぽつりと呟いた。
「……好きな人に、振られたの」
自分でも驚くくらい、小さな声だった。
でも、その言葉は確かに空気に溶けていく。
三湊くんの手が一瞬止まるのが、視界の端で分かった。
「私、慧くんのこと……諦められないよ」
そう言った瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。
情けなくて、未練がましくて、それでも本音だった。
三湊くんは少しだけ驚いた顔をしたあと、すぐに表情を和らげる。
何も言わず、私の前に温かいカップを置いてくれた。
「……それ、無理に諦めなくていいんじゃない?」
優しい声だった。
慰めるというより、受け止めるみたいな声音。
「好きな気持ちって、スイッチみたいに切れないでしょ」
私はカップを両手で包み込む。
温もりが、じんわり指先から伝わってきた。
「振られたからって、全部否定されたわけじゃないと思うよ」
その言葉に、思わず顔を上げる。
三湊くんは、私をまっすぐ見ていた。
同情でも、気遣いすぎでもない、静かな目。
「今は辛いよね。でもさ、黒瀬が誰かを本気で好きになれたってこと、それだけで……すごいことだと思う」
胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ溶けた気がした。
「……ありがとう」
そう言うと、三湊くんは小さく笑った。
「ここにいる間くらい、無理に元気出さなくていいよ。俺、コーヒーくらいは美味しく淹れられるからさ」
その言葉に、思わず少しだけ口元が緩む。
カフェの静けさと、温かい飲み物と、誰かがそばにいる安心感。
凍りついていた心が、ほんの少しだけ、解けていくのを感じていた。
三湊くんと明日香ちゃんに相談して自分の気持ちがようやくはっきりした。
振られて、確かに傷ついたし、辛かったけど。
それでもやっぱり諦めたくないんだ。
今の私が告白することはできないけど…。
記憶の欠片を集めたら…必ずもう一度君に伝えに行く。
だって大好きなんだ。
絶対、振り向かせる。
店内は落ち着いた音楽が流れていて、外の寒さが嘘みたいに暖かい。
……ここなら、少しだけ、息ができそう。
私はそう思いながら、静かに席に腰を下ろした。
カウンター席に腰を下ろすと、そこには三湊くんがいた。
エプロン姿で、いつもより少し大人っぽく見える。
周りを見渡すと、近くの席には誰もいない。
静かな店内で、コーヒーを淹れる音だけが響いている。
私はカウンターに視線を落としたまま、ぽつりと呟いた。
「……好きな人に、振られたの」
自分でも驚くくらい、小さな声だった。
でも、その言葉は確かに空気に溶けていく。
三湊くんの手が一瞬止まるのが、視界の端で分かった。
「私、慧くんのこと……諦められないよ」
そう言った瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。
情けなくて、未練がましくて、それでも本音だった。
三湊くんは少しだけ驚いた顔をしたあと、すぐに表情を和らげる。
何も言わず、私の前に温かいカップを置いてくれた。
「……それ、無理に諦めなくていいんじゃない?」
優しい声だった。
慰めるというより、受け止めるみたいな声音。
「好きな気持ちって、スイッチみたいに切れないでしょ」
私はカップを両手で包み込む。
温もりが、じんわり指先から伝わってきた。
「振られたからって、全部否定されたわけじゃないと思うよ」
その言葉に、思わず顔を上げる。
三湊くんは、私をまっすぐ見ていた。
同情でも、気遣いすぎでもない、静かな目。
「今は辛いよね。でもさ、黒瀬が誰かを本気で好きになれたってこと、それだけで……すごいことだと思う」
胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ溶けた気がした。
「……ありがとう」
そう言うと、三湊くんは小さく笑った。
「ここにいる間くらい、無理に元気出さなくていいよ。俺、コーヒーくらいは美味しく淹れられるからさ」
その言葉に、思わず少しだけ口元が緩む。
カフェの静けさと、温かい飲み物と、誰かがそばにいる安心感。
凍りついていた心が、ほんの少しだけ、解けていくのを感じていた。
三湊くんと明日香ちゃんに相談して自分の気持ちがようやくはっきりした。
振られて、確かに傷ついたし、辛かったけど。
それでもやっぱり諦めたくないんだ。
今の私が告白することはできないけど…。
記憶の欠片を集めたら…必ずもう一度君に伝えに行く。
だって大好きなんだ。
絶対、振り向かせる。