響け!シャガのクレッシェンド
いつか、綺麗な声が出なくなっても
その日、レオンハルト・ジッキンゲンは調査を終えて探偵事務所に帰るところだった。時刻は午後三時。予定よりもずっと早い帰りとなった。

(無事に事件が解決してよかった)

安堵した様子の依頼人の表情を思い出し、レオンハルトは帰る足を急ぐ。その時だった。

「リズ?」

少し先を、見慣れた後ろ姿が歩いているのが見えた。探偵社事務員のリズ・ポッターだ。彼女は鞄を手に歩いている。買い出しに行っていたのだろう。

レオンハルトはリズの周囲を見渡す。周りに怪しい人物はいない。そのことを確かめてからレオンハルトはリズに声をかけようとした。その時である。


白い雨が降り注ぐ あなたと出会った春の日
大輪の花が夜に咲く あなたと手を繋いだ夏の日
木の葉が色を変えていく あなたと背中を合わせた秋の日
冷たい風が手をすり抜ける あなたと別れた冬の日


リズの口から美しい歌声が出る。道行く人がリズの方を見つめ、その美しさに聞き惚れている様子だった。レオンハルトもその一人である。
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