青い青い空

「ハネムーン中なんだよ? 僕以外見ちゃダメ」

「先生は前見て運転してくださいね」


 その設定はどうやっても譲る気はないらしく、ぷうと頬を膨らせた彼に小さく笑みを浮かべながら、スマホを鞄の中に押し込んだ。


(にしてもまさか、先生の愛車が外車とは)


 テレビでしか見たことがなかったそれは最高級品の自動車。乗ることすら気後れしているというのに、渋滞に引っ掛かる度、道行く人たちや擦れ違う車の中からの視線が無駄に多い気がして、非常に居心地が悪い。流石、売れっ子作家は格が違う。


「飴でも舐める?」

「あ。大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


 乗っているのは甘い物好きのかわいい人だが。見た目だけで言えば、私とそう大差ないくらい若いし。


「そういえば先生、お茶淹れられるんですね」

「まあお茶ぐらいならね」

「他にもできますよね?」

「一人が長いから」

「お料理は?」

「できないよ。君のようにはね」

「お掃除は?」

「できないよ。君みたいには」


 白い目を向けると、彼は「ん?」とわざとらしく角度をつけて首を傾げた。


「どうしてわざわざそんなことを」

「僕が、狼じゃなくて子犬だからかな」

「はい?」


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