青い青い空
支えを失った体が、大きく前に傾いでいく。
「――! あぶな――」
背後で、先程の男性の声がした。
でもやっぱり自分のことなのにどこか他人事で、似たようなことを最近どこかで見たんだよなと一人、ぼうっとした頭で考えようとする。
“――私が、全ての世界から消えてなくなる夢と、言えばいいんでしょうか”
考えようとしてすぐ、転がり落ちそうになっていた体が、真正面から誰かに受け止められた。
「やれやれ。キスなんかじゃ到底足りないよこれは」
「……先生?」
「伊代クン大丈夫? 怪我はしていない?」
「あ、はい。何ともありません」
振り返ると、先程の男性が酷い顔色をして立っていた。その後すぐ、安心したように腰を抜かす。
それでようやく、今の状況がかなり危険だったことを理解する。
「全くもう。これ以上僕の敵を増やさないでおくれ」
「敵って、何のことです?」
「ひょんな出会いがきっかけで生まれる恋愛フラグを折って回らないといけない僕の心配事を減らして欲しいって言っているんだよ」
「日本語でお願いします」
けれど、彼の気遣いのおかげで、怖い思い出にはならずに済みそうだ。