青い青い空

 テンション高めの黒瀬をどうどうと宥めながら、自分の恋愛価値観についてさらけ出すことにした。平たく言うと、キスができるかできないか。


「そんなこと言ったら、あたし青崎ちゃんにキスできちゃうんだけど」


 ぶちゅっと唇を突き出す顔さえ美人って、一体どういうことなんだ。


「そんなこと言ったら、俺だって青崎ちゃんにキスできちゃうんですけど」


 その隣で同じように唇を突き出してくる久賀野については、丁重にお断りさせてもらった。


「いや、これマジな話で」

「取り敢えず久賀野くんは、女心を理解するところから始めたらいいと思うよ」

「……あのさ、これマジで伝わってない系? アリ中のアリなんだけど」

「はいはい。どうもありがとうね」

「年下が対象外じゃなかったら、全力で口説いてる」

「へ?」

「そんな風に思うくらいには、キスできちゃうんですけどね俺は」

「――っ?! あ、あのねえ……!」


 おばさんをからかわないでと全力で抵抗しようとしたが、気付けば私の上半身は、立ち上がった黒瀬に抱き締められていて、それもままならなかった。


「くっ、黒瀬ちゃ」

「見るなあーッ!!」

「いっ、息できな」

「こんなかわいい生き物、飢えた男どもの巣窟に放置してられるか。今すぐあたしが、ベッドで真っ赤な青崎ちゃんの全部食べ尽くしてやる」


 ハアハアと荒れた息に、思わず体を強張らせたのは言うまでもなかった。


< 179 / 647 >

この作品をシェア

pagetop