青い青い空
唐突に投げ掛けられた質問にも、彼は茶化すことも、ましてや驚くこともせず、ただ素直に答えた。「数え切れないほどあるよ」と。
「無力な自分に、何度嘆いたか。もう数えることすらやめたよ。そんな自分を、受け入れるしかなかった。俺が存在している意味もわからないまま」
「一石さんでも、そんな風に思うことがあるんですね」
「長生きしてるとね、いろいろあるんですわ」
(ついこの間アラフォーを年寄り扱いするなって言ってなかったっけこの人)
黙った私を覗き込みながら、彼は小さく笑った。
「でも俺は、消えないでいてよかったなって、今心底思ってる。俺が存在している理由を教えてくれた奴に出会えたから」
それが一体誰のことなのか、言われなくてもわかった。笑っていても、私には少しだけ泣いているように見えたから。
「だから、今を精一杯。俺は俺としてあれるだけ、この世界にありたいと思ってるよ。あいつのためにも」
――もちろんお前もだろ?
そんな風に視線で聞かれてしまっては、頷かないわけにはいかないというものだ。
「一個。いいですか」
「ん?」
「載せたいです。いつか、絶対に」
「……そうだな」
彼が遺した、あの本の続きを。