青い青い空

 睨み付けながら、弟は容赦なく苛立ちをぶつけてくる。

 けれど、私はそれを受け止めることなどできなかった。飛んできた肯定の言葉が、覚悟していた衝撃よりも大きすぎたから。


「かおんさんか」


 時間が経って冷静になったのか、宵はため息をつきながらテーブルに着く。


「向こうが勝手にした」

(宵くんが無責任なことをするとは思っていないけど……)


 受け止めきれなかった衝撃が、どうしてか、相手がかわいい子でよかったね――なんて拗ねた言葉でこぼれてくる。


「腹立ったから顔に思いっきし唾ぶっかけてやったけどな」

「お、女の子になんてことを」

「気分悪くなったからこれでもかってほど顔洗ってうがいして、それでも足りねえから父さんの焼酎でもうがいした」

「お酒飲んだの?!」


「飲んでねえわ」と、苛立った様子で頭をかいたあと、俯きながら「でも、それでも足りなかったから」とぼそり。


「唇の皮剥けるぐらい、ウエットティッシュで拭きまくった。つか剥けた」

「え。む、剥けたの?」


「うん」とさらに俯く彼の目の前には、食べ終わった餃子とチャーハンの皿、そして一切使われた形跡のない餃子のタレと、まだ半分以上残っているラーメンどんぶり。


「す、啜る系と染みる系は、しばらくやめとくね」

「うん」


 道理でえらく食べるのが遅いと思ったら。自宅でのラーメンCセット実現は、当分お預けだ。


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