青い青い空

page.73 黒龍の想い、碧龍の思い




 夜。ただいまーと帰宅すると、無駄に明るく出した自分の声が虚しく響いた。

 しんと静まり返る家の中は真っ暗。誰もいないならと、さっさと自室に入る。


 扉を開けてすぐ、視界に入る大きめのベッド。……たった数口の酒で眠りこけてしまった彼女を、そっと抱き抱えて自分のベッドに運んだあの時のことが、急に思い起こされる。


“まさか、疚しいことがあったんですか”


 疚しいことなんて一切ない。ずっと好きだった彼女に触れることの、何が疚しいか。

 眠っていたって、触れたいものは触れたい。できるものなら、その寝言を言っている唇に、口付けの一つくらいしたかったさ。


「……やってたらマジで最低だったな」


 踏み留まれたのは、彼女が涙を流していたから。『こばさん』と、何度も愛おしそうに呼ぶから。

 君は知らないだろう。知ることはないだろう。踏み留まれたと同時、ふつふつと怒りが込み上げたのを。


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