桜の咲くころ、思い出して
歩き出そうと思って顔を上げたら遠くの方に伊田くんの姿があった。
友達と何か話しながら、キャッキャと笑ってたまにオーバーにリアクションを取りながらサクサクと足を動かして…

やっぱりこのくらい余裕なんだ私が足りてないんだ。

「……。」

…あれから、考えてる。

伊田くんと話すたび思い出してる。


“今度教えてよ、川瀬ちゃんの秘密”


私の秘密…なのか、それもわからないけど。

でも誰にも言ったことはないから、ずっと私の中だけで。

『奈絵、話してもいいよ』

「え?」

何も言ってないのに気持ちを読まれてるみたいにヨシノが言うから。

『奈絵が話したけりゃ話せばいいよ』

私が話したければってそんなの…

『でもオレは奈絵のことが1番大事だから、奈絵が傷つくのは嫌だ』

ヨシノの言葉は真っ直ぐだ。

どんなことでも、いつだって、なんだって、無茶なことだって私に言うのに、その言葉全てに嘘はなくて。

『奈絵が話してもいいと思う相手ならオレは何も言わないよ』

それは私だけにしか聞こえない、私に向かって私のための言葉で私を思っての言葉。

だからね、信じてるの。

『まっ、つーかオレにそんな権利はないけどな~!』

ヨシノの言葉を信じてる。

『だから奈絵が決めていい』

私が決め…、私が…

でもまだわからないよ。

だって少し怖いもん。

私の話を聞いてくれるのはヨシノだけだったから。


私はどうしたいんだろうー…?
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