桜の咲くころ、思い出して

bloom4.)

「伊田くん…!」

ぽかっと温かくなった体がもどかしくて伊田くんを探した。
はやる気持ちが抑えきれなくて、どうしても聞いてほしくなったからつい名前を呼んでしまった。

「川瀬ちゃんどしたの?」

「伊田くんあのねっ」

伊田くんの元へ駆け寄る、あれだけ足を動かして疲れてるはずなのにこの時ばかりは軽くてとんっと前に立った。

「クラスの子たちとお弁当食べたの!」

これだけ、これだけを言いたくて。

「一緒に食べっていい?って自分で言えたの」

それがどうした?って感じなんだけど、でもわかってたの…


伊田くんは笑ってくれるって。

私に優しく微笑んでくれるって、そんな風に思ってた。


「伊田くんのおかげだよ!」


ね、やっぱり。

笑ってくれる、その笑顔が柔らかくてまぶしくてドキドキしてしょうがない。


「俺は何もしてないよ」

ぽっと体があったかくなって、体中に溢れ出して。 

伊田くんの顔を見ていたいのに上手く見られない、ドキドキが邪魔をするから。

「ううん、伊田くんが言ったから…伊田くんが教えてくれたから」

「俺テキトーに喋ってるだけだよ?」

ふふっと笑って、私を見る目は和やかで。

「だから、何か出来たならそれは川瀬ちゃんの力だよ」

風で揺れる猫っ毛に手を伸ばしたくなる。

「ね?」

もっと近づきたくなる。

伊田くんのことを知りたくなる。

その微笑みを、もっと見たくなって。

「今から自由時間だよ~!川瀬ちゃん何する?なんか変わったことする?」

「え、変わったこと?」

伊田くんといられたら変われるのかな?


もっと変われるのかな、私。

変えたい、この先を。


私にもできるならー…


『……。』
< 47 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop