桜の咲くころ、思い出して

bloom2.)

「川瀬ちゃんどこ行ってたのー?」

「…えっ!?」

教室に戻ったら、ひょっとドアから出て来た伊田くんに話しかけられた。まだ中にも入ってなかったのに。

「次移動教室だよ、もう誰もいないよ?」

「え、そうだっけ!?」

あ、音楽だ!
音楽室行かなきゃだった、早く教科書準備してっ

「川瀬ちゃんと一緒に行こうと思って待ってた」

「え…?」

あわてて教室の中に入って自分の席へ…と思ったんだけど背中に呼びかけるように言われたから。

「私と一緒に…?」

足が止まっちゃって、振り返ってしまった。

入学してからずっと1人だったから、誰かと一緒にっていう発想がなくて誘ってもらえるなんて…

「あ、もしかして俺のこと避けてた!?」

伊田くんが大きな声で叫ぶから、ドキッて心臓がおどろいた。

「うわっ、それか!それだよね!?」

「そんなことない!そんなことないよ!」

「ごめん!マジごめん~~~!」

「そんなっ、それはその…っ」

避けてたとかじゃないけど、全然そんなことはないけど…!

でもどうしたらいいか迷ってた私はいて。

「ごめんね!俺調子乗ってたわ、なんかいい感じだって勝手に思ってそれでっ」

「違うのっ!」

「あ、やっぱ違ったよね!?ごめん!!」

「あぁっ、そうじゃなくて!そうじゃなくて、あのね…っ」

体がふるえる、声がふるえる。

まだ迷うことはたくさんあって、どうしたらいいのかなんて全然わからないんだけど…っ

「初めてだったから…!」

きゅぅっとスカートの裾を握る。

「これがそうなのかなとか…っ、誰にも聞けないし聞いていいのかもわかんないし…伊田くんのこと考えるとわからなくなって!」

ずっとドキドキしてる。

ううん、もうドキドキどころじゃない。

心臓がどうにかなっちゃいそうだよ、伊田くんといたら。

「川瀬ちゃん…」
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