呪われた聖女は運命を覆したい
私はセア様と
「ムク様、すべての準備が整いました。少し早いですが、お眠りになりますか?」
セア様と婚約をした夜、私はいつものように神殿の自室へと戻った。
今私の隣に立っているのは、ラリア・フィエルテ。
平民の身分でありながら最上位クラスに匹敵する風魔法を使うため、私の専属メイドになり常に私を支えてくれる大切な人だ。
金髪の髪はハーフツインお団子にしていて、顔立ちはすごく色っぽくて社交界に出るとご令嬢に間違えられるくらいなのだ。
そして、服はメイド服なのだが少し違うのは首元のリボン。
スペネット侯爵令嬢の専属メイドを意味する赤色のリボンには、侯爵家の家紋が知らされている。
ラリアは出会った時から私を差別しなかった人で、マリアと同じくらい大切な人だ。
だけど、過去ではラリアも幽閉され、しまいには私の目の前で殺されている。
「いいえ、今日は少し貴女とマリア、サニアに話したいことがあるの。まずはラリアに話してもいいかしら?」
「え…?は、はい。もちろんでございます」
驚きながらも、ラリアは頷いてくれた。
私は彼女に座るように促し、しっかりと向き合った。
「今から私が言う言葉を、全て信じてほしいの。そして貴女に、協力してほしい」
ラリアは驚いたように少し目を見開いた後、ゆっくりと頷いた。
彼女は元スパイ・殺し屋一家の凄腕のナイフ使いだ。
だから、ラリアは私の護衛の立場も担っている。
私たちの作戦には必要不可欠の存在だと思っている。
そのことをセア様に告げると。
『ムクが信頼をおいている人物なら平気だろう』
と言ってくれたし、大丈夫なはず。
そうして私は、今日あった全ての出来事を話した。
皇宮魔術塔への移動、アラン様の悪事、サニアの悪事、タロットカードとの契約、未来のこと、セア様との婚約のこと。
全てを聞き終わった時、ラリアは真剣な顔で私に聞いた。
「状況は理解しました。しかし、本当にそのようなことをするのですか?それに、婚約も…」
「ええ、本当にするのよ。私はね、決して彼らを許しはしないわ。誰かの手でふたりが捕まる前に、この手で闇に葬るの。婚約は、彼とならいいと思ったの。セア様はお優しくて、それに同じ痛みを知っているから」
そう言うと、ラリアは少しだけ表情を暗くした。
ラリアは私は黒魔法のせいで苦しんでいることを知っている。
それを解決できずにラリアは心を痛めている。
「私、もう黒魔法は嫌いじゃないの」
「え?」
「この力のおかげで、私はこの帝国の未来を救えるもの。それってとても名誉なことじゃない」
その言葉に、ラリアは目を潤ませた。
そうしてぎこちなく笑ってみせた。
「はい。本当に…本当にそうです」
「でしょう?でも、私の力だけじゃ成し遂げられないの。セア様とふたりでもダメ。だからラリア、貴女の力が必要なのよ。お願い、いいわよね?」
ラリアはこくこくと頷いた。
ラリアとは家族同然に育ち、誰にも切ることができない絶対的絆があると思っている。
嬉しいこと、悲しいこと全てを共有してきた唯一の存在。
そんな彼女を巻き込んでしまうのは申し訳ないけれど、やはり彼女の力は必要なのだ。
「ありがとう。これからもよろしく頼むわね」
「はい。もちろんでございます」
話の折り合いがついて、その後セア様の時と同じようにカードを使ってアミューズを見えるようにした。
挨拶も済ませて全ての用事が終わり、私はマリアのところに行くために部屋を後にした。
ラリアにはマリアとふたりきりで話がしたいと言っておいて。
本当は、この後のサニアとの話を聞かれたくないだけだけれど。
そう思いながら歩くと、すぐにマリアの部屋についた。
ノックをする。
コン、コン、コン。
「はい。どなたですか?」
「ムクよ。入ってもいい?」
「ええ、もちろんよ」
そう返事が返ってきた後、私はゆっくりとドアを開けた。
すると、いつものように机に向かっているマリアの姿があった。
「少し待ってね。これだけ終わらせるわ」
「もちろん。ゆっくりでいいよ」
私はベッドに座らせてもらって、マリアを待った。
それから数分経って書き終わったのか、筆を置いてマリアが私の方を向いた。
「ごめんなさいね、待たせてしまって。今紅茶を淹れるわ」
「ありがとう。突然押しかけちゃってごめんね」
「いいのよ。今日はムクに会えなくて悲しかったんだから」
そう言って、マリアはふふっと笑った。
そして棚から紅茶の茶葉を出して、いつものように紅茶を淹れてくれる。
いつもの花の香りがして、私はホッとする。
その後カップを持って目の前に座った。
「はい、アールグレイ。好きでしょう?」
「うん。ありがとう」
私はカップを受け取って、紅茶を飲んだ。
マリアも一口口に含んだ後、私に優しい眼差しを向けて言った。
「それで、何かあったのかしら。こんな夜に来るなんて珍しいじゃない?」
マリアはたったひとりの公爵令嬢でありながら、メイドや護衛をつけずここにいる。
だから、誰かがこの部屋に入ってくることはないのだ。
『主様、周りに人はいませんよ』
アミューズがマリアが見えていないのをいいことに、私の横に立ってそう告げた。
私はホッとして言葉を発した。
「実は私、セア様と婚約することにしたの」
「セア様…ってもしかして第四王子殿下様?」
「そうなの。今日の両陛下謁見の前にお会いしたのだけれど、噂と全く違ってお優しくて素敵な方なのよ。まあ、最初に剣を向けられた時は驚いたけれど…」
私が苦笑いをすると、マリアは驚いたように私の頬に触れた。
「まあ、そうなの…!?ケガはしてない?」
「うん。大丈夫だよ」
そう言って笑うと、マリアはホッとしたように座り直した。
それから、私が言葉を続ける。
「セア様と一緒にやりたいことを見つけたの。契約婚約のようなものだけど、それでもいい。私がセア様の描く未来をお手伝いしたいと思ったのよ」
「そう…なのね。でも、ムクはそれでいいの?」
マリアは控えめに私に聞いた。
恋愛結婚がしたい、と言ったのは私だ。
それなのに初めてあったと人と婚約してくるというのは、マリアも不安を感じるところがあるのだろう。
「むしろ私、セア様と婚約できて嬉しいの。セア様って私と同じ黒魔法使いでしょう?だから、彼は私を差別しない。それに、周りの人も私を受け入れてくれるの」
マリアは驚いたように目を見開いた後、ふっと笑った。
「なら、よかったわ。貴女を認めてくれる人がいて」
「ふふっ。それでね、本当は皇宮魔術塔に行く予定なんだけど、セア様が皇宮にこれるように手配してくれるって言ってくれたの。私…正直言って魔術塔に行きたくないし、かといってここにいるのも嫌なの」
マリアは私の気持ちを知ってくれていると思う。
“呪われた聖女”などと言われ、いじめられ続けていることも知っている。
マリアはいつも私をかばってくれるの。
魔術塔に行けば同じ扱いを受け、マリアのようにかばってくれる人もいなくなってしまう。
それは辛かった。
「……なら、よかったわね」
「え?」
「だってそうでしょう?貴女が豊かに暮らせる未来を、どれだけ望んだことか。貴女が幸せなら私も嬉しいのよ」
意外な答えが返ってきた。
じわっと胸の奥が熱くなった。
「うん、本当に。私は今、幸せなのかも」
過去に戻って数日、私は復讐のことだけを考えてきた。
だけど今、セア様と出会ってなにか変わっている気がする。
「そう。ならよかったわ。そうだ、皇宮に行っても私と仲良くしてちょうだいね」
「もちろん!私たちは大親友なんだから」
ふたりで笑い合った。
マリアはあんな残酷な手段で殺させない。
今度こそ、マリアを守ってみせる。
それから少しだけふたりで話をして、部屋を後にした。
セア様と婚約をした夜、私はいつものように神殿の自室へと戻った。
今私の隣に立っているのは、ラリア・フィエルテ。
平民の身分でありながら最上位クラスに匹敵する風魔法を使うため、私の専属メイドになり常に私を支えてくれる大切な人だ。
金髪の髪はハーフツインお団子にしていて、顔立ちはすごく色っぽくて社交界に出るとご令嬢に間違えられるくらいなのだ。
そして、服はメイド服なのだが少し違うのは首元のリボン。
スペネット侯爵令嬢の専属メイドを意味する赤色のリボンには、侯爵家の家紋が知らされている。
ラリアは出会った時から私を差別しなかった人で、マリアと同じくらい大切な人だ。
だけど、過去ではラリアも幽閉され、しまいには私の目の前で殺されている。
「いいえ、今日は少し貴女とマリア、サニアに話したいことがあるの。まずはラリアに話してもいいかしら?」
「え…?は、はい。もちろんでございます」
驚きながらも、ラリアは頷いてくれた。
私は彼女に座るように促し、しっかりと向き合った。
「今から私が言う言葉を、全て信じてほしいの。そして貴女に、協力してほしい」
ラリアは驚いたように少し目を見開いた後、ゆっくりと頷いた。
彼女は元スパイ・殺し屋一家の凄腕のナイフ使いだ。
だから、ラリアは私の護衛の立場も担っている。
私たちの作戦には必要不可欠の存在だと思っている。
そのことをセア様に告げると。
『ムクが信頼をおいている人物なら平気だろう』
と言ってくれたし、大丈夫なはず。
そうして私は、今日あった全ての出来事を話した。
皇宮魔術塔への移動、アラン様の悪事、サニアの悪事、タロットカードとの契約、未来のこと、セア様との婚約のこと。
全てを聞き終わった時、ラリアは真剣な顔で私に聞いた。
「状況は理解しました。しかし、本当にそのようなことをするのですか?それに、婚約も…」
「ええ、本当にするのよ。私はね、決して彼らを許しはしないわ。誰かの手でふたりが捕まる前に、この手で闇に葬るの。婚約は、彼とならいいと思ったの。セア様はお優しくて、それに同じ痛みを知っているから」
そう言うと、ラリアは少しだけ表情を暗くした。
ラリアは私は黒魔法のせいで苦しんでいることを知っている。
それを解決できずにラリアは心を痛めている。
「私、もう黒魔法は嫌いじゃないの」
「え?」
「この力のおかげで、私はこの帝国の未来を救えるもの。それってとても名誉なことじゃない」
その言葉に、ラリアは目を潤ませた。
そうしてぎこちなく笑ってみせた。
「はい。本当に…本当にそうです」
「でしょう?でも、私の力だけじゃ成し遂げられないの。セア様とふたりでもダメ。だからラリア、貴女の力が必要なのよ。お願い、いいわよね?」
ラリアはこくこくと頷いた。
ラリアとは家族同然に育ち、誰にも切ることができない絶対的絆があると思っている。
嬉しいこと、悲しいこと全てを共有してきた唯一の存在。
そんな彼女を巻き込んでしまうのは申し訳ないけれど、やはり彼女の力は必要なのだ。
「ありがとう。これからもよろしく頼むわね」
「はい。もちろんでございます」
話の折り合いがついて、その後セア様の時と同じようにカードを使ってアミューズを見えるようにした。
挨拶も済ませて全ての用事が終わり、私はマリアのところに行くために部屋を後にした。
ラリアにはマリアとふたりきりで話がしたいと言っておいて。
本当は、この後のサニアとの話を聞かれたくないだけだけれど。
そう思いながら歩くと、すぐにマリアの部屋についた。
ノックをする。
コン、コン、コン。
「はい。どなたですか?」
「ムクよ。入ってもいい?」
「ええ、もちろんよ」
そう返事が返ってきた後、私はゆっくりとドアを開けた。
すると、いつものように机に向かっているマリアの姿があった。
「少し待ってね。これだけ終わらせるわ」
「もちろん。ゆっくりでいいよ」
私はベッドに座らせてもらって、マリアを待った。
それから数分経って書き終わったのか、筆を置いてマリアが私の方を向いた。
「ごめんなさいね、待たせてしまって。今紅茶を淹れるわ」
「ありがとう。突然押しかけちゃってごめんね」
「いいのよ。今日はムクに会えなくて悲しかったんだから」
そう言って、マリアはふふっと笑った。
そして棚から紅茶の茶葉を出して、いつものように紅茶を淹れてくれる。
いつもの花の香りがして、私はホッとする。
その後カップを持って目の前に座った。
「はい、アールグレイ。好きでしょう?」
「うん。ありがとう」
私はカップを受け取って、紅茶を飲んだ。
マリアも一口口に含んだ後、私に優しい眼差しを向けて言った。
「それで、何かあったのかしら。こんな夜に来るなんて珍しいじゃない?」
マリアはたったひとりの公爵令嬢でありながら、メイドや護衛をつけずここにいる。
だから、誰かがこの部屋に入ってくることはないのだ。
『主様、周りに人はいませんよ』
アミューズがマリアが見えていないのをいいことに、私の横に立ってそう告げた。
私はホッとして言葉を発した。
「実は私、セア様と婚約することにしたの」
「セア様…ってもしかして第四王子殿下様?」
「そうなの。今日の両陛下謁見の前にお会いしたのだけれど、噂と全く違ってお優しくて素敵な方なのよ。まあ、最初に剣を向けられた時は驚いたけれど…」
私が苦笑いをすると、マリアは驚いたように私の頬に触れた。
「まあ、そうなの…!?ケガはしてない?」
「うん。大丈夫だよ」
そう言って笑うと、マリアはホッとしたように座り直した。
それから、私が言葉を続ける。
「セア様と一緒にやりたいことを見つけたの。契約婚約のようなものだけど、それでもいい。私がセア様の描く未来をお手伝いしたいと思ったのよ」
「そう…なのね。でも、ムクはそれでいいの?」
マリアは控えめに私に聞いた。
恋愛結婚がしたい、と言ったのは私だ。
それなのに初めてあったと人と婚約してくるというのは、マリアも不安を感じるところがあるのだろう。
「むしろ私、セア様と婚約できて嬉しいの。セア様って私と同じ黒魔法使いでしょう?だから、彼は私を差別しない。それに、周りの人も私を受け入れてくれるの」
マリアは驚いたように目を見開いた後、ふっと笑った。
「なら、よかったわ。貴女を認めてくれる人がいて」
「ふふっ。それでね、本当は皇宮魔術塔に行く予定なんだけど、セア様が皇宮にこれるように手配してくれるって言ってくれたの。私…正直言って魔術塔に行きたくないし、かといってここにいるのも嫌なの」
マリアは私の気持ちを知ってくれていると思う。
“呪われた聖女”などと言われ、いじめられ続けていることも知っている。
マリアはいつも私をかばってくれるの。
魔術塔に行けば同じ扱いを受け、マリアのようにかばってくれる人もいなくなってしまう。
それは辛かった。
「……なら、よかったわね」
「え?」
「だってそうでしょう?貴女が豊かに暮らせる未来を、どれだけ望んだことか。貴女が幸せなら私も嬉しいのよ」
意外な答えが返ってきた。
じわっと胸の奥が熱くなった。
「うん、本当に。私は今、幸せなのかも」
過去に戻って数日、私は復讐のことだけを考えてきた。
だけど今、セア様と出会ってなにか変わっている気がする。
「そう。ならよかったわ。そうだ、皇宮に行っても私と仲良くしてちょうだいね」
「もちろん!私たちは大親友なんだから」
ふたりで笑い合った。
マリアはあんな残酷な手段で殺させない。
今度こそ、マリアを守ってみせる。
それから少しだけふたりで話をして、部屋を後にした。