彼は魅惑のバレリーノ
「でも…思ったより伝わってないもんなんだなぁ。
結構、攻めてたつもりだったのに。」
柊くんは、紅茶のカップを指で軽くなぞりながら、
少し拗ねたように笑った。
その横顔が妙に大人っぽくて、胸がざわつく。
「え? そうなの?」
「そうだよ。」
「いやだってさ!
柊くんの周りには綺麗な人ばっかりだし!
あの天音さんって人も。
しかも…呼び捨て。」
ぼそっと呟く。
こんなこと言ったら重たいって思われるかも。
「天音って名字だよ?
天音 美玲。」
「あ、そうなの?」
「そうそう。」
「へぇー…でも、すごい美人だよね。
私とは大違い。」
言った瞬間、視線が落ちる。
自分の指先をいじってしまう癖が出る。
そんな私を、柊くんはじっと見ていた。
「うーん、王子様だったらさ。
“君が一番綺麗だ”って言うものだけど…
確かに、一華さんより綺麗な人も優れてる人もいっぱいいるよね。」
「し、正直。」
「嘘のほうがいい?」
「いや…」
「俺が一華さんを見た時は、
“変な人、なんて図々しいんだろう”って思ったよ。」
「うっ。」
思わず肩が跳ねる。
柊くんはくすっと笑って続けた。
「一週間毎日来てさ、“あ、またいる”って思って。
一時間潰して戻ってきてもまだいたから声かけた。
でもマリアの絵を見て、
“この人にはこんな風に見えてるんだな”って思った。
じゃあ俺のことはどんな風に見てくれるんだろうって、興味が湧いたんだよね。」
その時のことを思い出すように、
柊くんは少し遠くを見る。
その横顔が、なんだか切なくて綺麗だった。