彼は魅惑のバレリーノ
「お邪魔しました。」
「送っていくよ。」
「え、いいよ!」
「遅くなったし。」
のんびりデザートまで食べていたら、もう22時半。
夜風が少し冷たくて、歩くたびに肌に触れる。
「ありがとう。」
二人で駅前まで歩く。
街灯の下で、柊くんの横顔が静かに光る。
「日曜日さ、10時とかでいい?」
「もちろん。」
「じゃあ、迎えいくよ。」
「え、ほんとに?」
「……あ、でも住所バレいやか。」
「いやそんなことは。」
「危機感持った方がいいよ。
女性なんだからさ。」
淡々としてるのに、
その言い方が妙に優しい。
「それは、どうも。
でも柊くんは、そんな危ない人じゃないよね?」
そう言うと、
柊くんはふっと目を細めて、
口元だけで笑った。
にたり、と。
「さて……どうだろうね。」
夜の街灯に照らされたその笑みは、
いつもの淡白さとは違って、
どこか意味深で、
少しだけ危うい。
「い、色気ダダ漏れしてますよ!
気をつけて!」
「ふっ。なんだそれ。」
夜風に揺れる前髪の下で、
ほんの一瞬だけ口元が緩む。
その笑い方がまた色気を増していて、
言ったそばから心臓が忙しい。
「じゃあ、近所のコンビニに迎えお願い!」
「ん。わかった。
あとで場所教えて。」
「ありがとう。」
「じゃあね、気をつけて。
家ついたら一応連絡して。」
「うん。一応ね」
そう言って改札口で別れた。
電車に乗り込んだ瞬間、
胸の奥がドクドクとうるさくなる。
なんか本当……ドキドキさせられる。
顔が良すぎるせいだ。
あ、身体もだ。
歩き方も、声も、距離の詰め方も、
全部が自然で、全部が反則。
——日曜日、どうなるんだろう。
考えただけで、
頬がじんわり熱くなる。