彼は魅惑のバレリーノ
美術館に入る。
ひんやりした空気と、わずかに漂う絵の具の匂い。
今回の展示は、プロの美術家たちが集めた作品展。
テーマは——春の幻影。
受付でチケットを渡すと、館内の静けさがすっと耳に落ちてくる。
この静かな雰囲気、好きだな。
足音さえも控えめになる。
私は一枚一枚、絵をじっくり見る。
柔らかい色彩、淡い影、光の粒。
同じ“春”でも、描く人によってまるで違う世界になる。
気づけば、彼の存在を忘れるほど夢中になっていた。
最後の絵まで見終わったところで、ふっと現実に戻る。
……まずい。
柊くんは?
退屈してどこか行っちゃったかな。
慌てて振り返ると——
私の半歩後ろで、彼が静かに絵を見つめていた。
腕を組んで、少し前のめりになって。
真剣な横顔。
その表情が、作品よりもずっと綺麗で、胸がきゅっとなる。
気づいた彼が、ゆっくりこちらを見る。
「……夢中だったね。」
声は小さいのに、やけに近く感じる。
ひんやりした空気と、わずかに漂う絵の具の匂い。
今回の展示は、プロの美術家たちが集めた作品展。
テーマは——春の幻影。
受付でチケットを渡すと、館内の静けさがすっと耳に落ちてくる。
この静かな雰囲気、好きだな。
足音さえも控えめになる。
私は一枚一枚、絵をじっくり見る。
柔らかい色彩、淡い影、光の粒。
同じ“春”でも、描く人によってまるで違う世界になる。
気づけば、彼の存在を忘れるほど夢中になっていた。
最後の絵まで見終わったところで、ふっと現実に戻る。
……まずい。
柊くんは?
退屈してどこか行っちゃったかな。
慌てて振り返ると——
私の半歩後ろで、彼が静かに絵を見つめていた。
腕を組んで、少し前のめりになって。
真剣な横顔。
その表情が、作品よりもずっと綺麗で、胸がきゅっとなる。
気づいた彼が、ゆっくりこちらを見る。
「……夢中だったね。」
声は小さいのに、やけに近く感じる。