迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
ステップを踏み間違えてシドリウスの足を踏んでしまったり、転んでしまったりしたらどうしよう。
及び腰になっていたら、シドリウスが回り込むようにしてフィリーネの前に立った。
「こういう祭りのダンスは貴族のものとは違ってなんでもありだ。上手く踊ろうなんて考えるな。頭を空っぽにして、ただ音楽に身を任せておけば、自然と身体が踊りたいように踊ってくれる。ほら」
「わっ!」
シドリウスに手を引かれたフィリーネは、広場の中央まで連れて行かれる。
ここまで来たら流石に踊って帰らないわけにはいかない。
覚悟を決めたフィリーネはシドリウスのアドバイスどおりに踊ってみることにした。
上手く踊ろうという意識は封印して、頭を空っぽにする。ただ音楽に身を任せてみる。
するとどうだろう。これまでとは打って変わって、身体が自然とリズムに乗れるようになった。
もつれていた足が勝手にステップを踏む。音楽に合わせてくるりとターンすれば、シドリウスが腰を支えてくれた。
楽しい。こんなに楽しいのは初めてだ。身体が軽くていつまでも踊っていられる。
カロンから習った形式的なダンスだけでなくアドリブも加えてみる。
フィリーネは感じるがままに踊り続けた。
いつの間にか心に余裕も生まれてきて、最初こそ下ばかり向いていた顔を上げられるようになった。
一度も失敗することなく踊り終えたフィリーネは、息を弾ませながら満面の笑みを浮かべる。