迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「とにかく、今日のフィーはいつも以上に可愛くて綺麗だ。この姿を他の誰にも見せたくないし、腕の中に閉じ込めておきたいくらい俺の心は独占欲でいっぱいになっている」
真摯な眼差しと甘い言葉が紡がれる。
フィリーネの心臓がきゅうきゅうと締め上げられるのは至極自然なことだった。
(うっ。いけません、いけません。こんな風に言われてはコロッと恋に落ちてしまいますが、私はあくまでもシドリウス様の生贄です!!)
フィリーネは胸の上に手を置いて、必死にわき起こった感情に蓋をする。
(シドリウス様は純粋に私という生贄を他の誰かに横取りされないか心配しているだけです。恋愛的な意味はまったくないはずなので、勘違いしてはいけません。迷惑をかけてしまいます)
自分の立場を忘れるなと心の中で忠告する。
シドリウスは心配しているようだが、人間の男性はフィリーネを食べない。
横取りされる可能性があるとすれば、竜王陛下のシドリウスくらいだ。
「準備はできましたか? そろそろ出発しないと遅れちゃいますよ」
廊下からひょっこり顔を出したのはヒュドーだった。彼もまた、灰色の燕尾服に身を包んでいて日頃よりも洗練されている。
シドリウスはヒュドーを一瞥して答える。
「ああ、馬車を回しておいてくれ。すぐに向かう」
「承知しました。それじゃあ僕とカロンは先に玄関へ向かいます」
カロンとヒュドーは一礼すると部屋から出ていく。
シドリウスは二人を見送った後、フィリーネに視線を戻した。