迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


「承知しました。今まで通り、シドリウス様とお呼びしますね」
「ああ、フィーに名前で呼ばれるほど嬉しいことはない」
 シドリウスがアイスブルーの目を細める。

 そのあまりにも嬉しそうな表情に、フィリーネの心臓がギュンと苦しくなった。
 フィリーネは視線を逸らすと、頬にかかる白銀色の髪を耳にかける。

「これで私を召し上がる方は、シドリウス様しかいらっしゃいませんね」
「それはどういう意味だ? 俺以外の誰がフィーを食べるっているんだ?」
「人間は人間を食べません。だから、もし私を食べる相手がシドリウス様以外にいるとすれば、それは竜王陛下に違いないと思っていました。ですが、今となってはシドリウス様だけです」

 フィリーネは胸の辺りで手を組む。やがて、目を爛々と輝かせ始めた。
「竜の姿を見て確信しました。あの姿であれば、問題なく私を丸呑みしていただけると!!」
 頬を赤らめて「はああっ」とため息を漏らすフィリーネに対して、シドリウスは目眩を覚えたのかふらついた。

「……ちょっと待ってくれ。フィーはずっと食べるの意味を勘違いしていたのか!?」
「はい? 食べるって食事のことですよね? シドリウス様の栄養になるべく、私は頑張って太りました。胸は膨らみませんでしたが、お腹には肉がついたので食べ応えはあると思います!」
 フィリーネはこてんと首を傾げてみせる。
 シドリウスは、天井を仰ぐと目元を手で覆った。

「どこでそんな勘違いを……」
「私は生贄の花嫁です。食べる時は是非とも竜のお姿でお願いします。鋭い牙で肉を裂き、血を滴らせながら強い顎で骨を砕いて私をひと思いに食べ……」
「ストップ! それ以上物騒な表現はしなくていいから。というかやめてくれ!」

 シドリウスは手を前に突き出して懇願する。
 続いて、両手でフィリーネの顔を包み込むと、真摯な眼差しを向けてきた。

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