迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
自分が試練になっていることなどつゆとも知らないフィリーネは、笑みを浮かべて力強く鼓舞する。
シドリウスの呻き声は一層深くなった。しばらくして、諦めたように大人しくベッドに横になる。しかし、ここからが彼にとってさらなる試練だった。
「なっ、フィー!? 何をしているんだ?」
シドリウスが素っ頓狂な声を上げた。
フィリーネはきょとんとした表情で小首を傾げる。
「え? 何って添い寝です。こうすれば眠れると思いまして」
「これは添い寝ではなく、俺が抱き枕になっているだけな気がするんだが……」
今のフィリーネはシドリウスに抱きついている状態だ。
「くっついて寝た方が温もりを感じて安眠できるでしょう? 悪夢を見るのは独りで眠るからです。こうした方が悪夢に襲われなくて済みます」
フィリーネはシドリウスを安心させるようにさらに身体を密着させる。
シドリウスの胸に顔を埋めれば、彼の心臓の音が聞こえてきた。
速度が速い気がしないでもないが、その音が妙に心地良い。
「シドリウス様がぐっすり眠れるまで起きています。だから安心してください。きっと今夜はぐっすり、眠れ、ますよ……」
話していたらだんだん瞼が重くなっている。
まだ眠るわけにはいかないのに。
頭の隅で必死に言い含めるフィリーネだったが睡魔には抗えず、そのまま夢の世界へと旅立ってしまった。