【書籍化】素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる【コミカライズシーモア先行連載中】
 意識をしている男の人の前に出ると、言いたいことが何も言えない。思ったことと反対の意味の言葉が出てきてしまう。それで、最初は好意的だったりする相手から距離を取られたり、そんなことを繰り返している内に、ますますそれはひどくなってしまった。

 どうしても「またやってしまうんじゃないか。また嫌われてしまうんじゃないか」と思うと、緊張してしまって、何度も何度も繰り返してしまうのだ。

 そんな頑ななアリスの心に何度も何度も体当たりして、その頑丈な扉を壊れかけにしてくれたのは、他でも無いゴトフリーだ。

 ゴトフリーはアリスが自分を選んでくれたとそう言ったけれど、アリスにとってはゴトフリーこそが、彼だけが、めんどくさくて、もつれてしまっていたアリスの心を丁寧に時間をかけて解いてくれたのだ。

 その人と会うために、どれだけの努力をしたって良い。すぐに会えないなんて我慢出来ない。その優しい紺色の瞳を見るためになら、自分に出来ることならなんだってするって、そう思うのだ。


◇◆◇


「ここかぁ」

 アリスは、そう呟いてその崖を見下ろした。

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