【書籍化】素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる【コミカライズシーモア先行連載中】

29 額と唇

 レオからアリスの手を受け取ったブレンダンはどこか複雑そうな表情をしている。

 その爽やかであまい顔が何とも言えぬ面持ちなのを見て、アリスは首を傾げた。

 そういえば今夜、彼はあまり言葉を発してない。

 無口な方ではないと思うし、今までの三人が自分と踊っている時に楽しそうにしていてくれていたから、彼がそんな顔をしている理由が思いつかなかったのだ。

 二人で向かい合ってお辞儀をしてから踊り出すと、その顔が想像させる通りダンスは多分一番上手い、と思った。軽やかなステップを踏むその足取りには迷いなく、踊っているアリスをリードするのも完璧だ。

「……気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど、さっきまでの三人みたいに僕は君に気軽に親愛のキスを出来る立場にないんだ。君の恋人のゴトフリーは僕にとって……すごく大事な存在なんだけど、ごめんね」

 そう言った彼は複雑そうだ。ああと、アリスはその言葉に今夜の彼の態度に合点がいった。

 きっとブレンダンは自分がゴトフリーに超えられない壁として、激しく意識されているのをわかっているのだ。それに彼のコンプレックスの元となっていることも。

 だから、そういう気持ちを持っている彼をすこしでも煽るような真似をしたくない、とそう言いたいのだろう。

「ブレンダンさんは恋人を作らないんですか?」

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