第一部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
蝶の会の会場は、甘ったるい香りと低いざわめきに満ちていた。仮面をつけた人達で溢れており、天井から垂れるシャンデリアの光が、怪しげに光っている。

「この香りあまりよくない、嗅がないように」

セナが耳元でささやく。

「ええ」


会場内を一通り見て回り、オークション会場に人々が集まってくる。
すると猫の仮面をつけた男性がでてきた。


「皆様、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
真夜中のオークション 蝶の会を始めさせていただきます。」

猫の仮面をつけた司会者が進行していく、オークションの内容は、珍しい絵画や、珍しい宝石をたくさん使ったドレスやネックレス。
確かに貴重なものばかりだが、特別興味をそそるものはない。


やがて、会場の照明が一段と落とされ、司会の猫仮面がゆっくりと手を上げた。

「――さて。皆様お待ちかね、本日の最後にして最大の目玉商品をご紹介いたします」

空気が変わる。
先ほどまで余裕を見せていた客たちの背筋が、目に見えて強張った。

「その名も――魔女の雫」

再びワゴンが運ばれてくる。
透明なケースの中で、あの黒いダイヤが静かに光を放っていた。光というより、闇が凝縮されているような、不自然な輝きだ。

見つめた瞬間、胸の奥がひやりと冷える。
視界の端が歪み、床がわずかに揺れた気がした。

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