第一部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
私は、そっと目を閉じる。

母は、私を守るために死んだ。
父は、その事実を隠した。

そして今――
その“守られて残った命”が、再び狙われている。

ゆっくりと、目を開ける。

「だったら」

私は、はっきりと決めた。

「お父様が何を考えていようと関係ない。
 蝶の会が、王が、研究者が――」

胸の奥から、言葉を掬い上げる。

「私は、私を使わせない
私が私らしく生きるために…」

ユウリは、深く頭を下げた。

「そのために、私はここにおります」

個室の外から、食器の触れ合う音が聞こえた。
何も変わらない、いつもの街の音。

けれど、私の中では確かに何かが終わり、
そして始まっていた。

――もう、戻れない。

そう理解した瞬間だった。

静かに息を吐き、私は立ち上がる。

守られるだけの存在ではいられない。
自分の足で、過去に向き合う。
そして未来を選ぶ。

その決意だけが、胸の奥で確かに灯っていた。

第一部 完
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