ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
「えっ……どうして?」
(祥ちゃんから何か聞いたのかな……)
そう思って聞き返すと、正人くんはお酒の入ったグラスを揺らしながら言った。
「なんか今週キャンパスで会ったとき、あいつ顔死んでたからさ。何も言ってなかったけど、何かあったんかなーって」
その言葉に、胸が思い切り締め付けられた。
こうしてる今も、彼はひとりで苦しんでいるのかもしれない。
「…………っ」
正人くんに言葉を返そうと顔を上げると、斜め向かいの席に座っている新入生の男の子たちから、視線を感じた。
それに戸惑っていると、正人くんも彼らの視線に気づき、ウンウンと頷いて笑いながら言った。
「そりゃあ、野郎どもはやっぱりヨッシーのこと気になるよなあ」
少し反応に困り「えっと……」となっていると、その中の一番元気なタイプの子が、思い切ったように身を乗り出してきた。
「……ハイ! 質問ですっ! 美絵さんは、彼氏とかいるんですか!?」
直球の質問に、周りの一年生たちも息を呑んで私の答えを待っている。
「え!? あっ……はい。います」
慌てて、首を縦に振って答えた。
男の子たちは「いやー、やっぱりそうですよねえー!」と大袈裟に肩を落としてがっかりしてみせた。
その様子を見て笑う正人くんが、「今日来てねーけど、このサークルのやつだよー! 俺たちの同期!」と明かした。
「マジすか!! どんな人ですか? 会いたいっす!」
「んー、優しくていいやつだよ。な、ヨッシー?」
そう振られて、大好きな彼の笑顔を思い出しながら「……うん」と小さく頷いた。
新入生たちの無邪気な「会いたい」という言葉に自分の想いが重なって、張り詰めていた糸が切れてしまうような感覚がした。
(会いたい……私も、祥ちゃんに)
陽だまりみたいな、あの優しくて柔らかい笑顔に触れたい。
会いたくて、申し訳なくて、胸の奥がギュウっと痛くなった。