ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。

「なに? コーチ。ほしいの?」

 ぼーっとして彼の手元のグミを見つめてしまっていたようで、黄色の一粒を差し出された。

「……あー、サンキュ」

 なんとなく断らずにそのまま受け取って、口に入れた。
 色の通り、甘酸っぱいレモン味だった。

「美味いな」

「うん。これ好きで、いつも買っちゃうんだよねー」

 お小遣いで買ってるから値下げしてほしい、などとぶつぶつ呟きながらも、その手は止まらない。

 やがて、電車がホームに滑り込んできた。
 僕が見送る予定の、急行列車だった。

「コーチ、乗らないの?」

「俺、各駅だから」

「ふーん。じゃあバイバイ」

 ピョンッと軽い足取りで車両に乗り込んだ彼は、「あ、そうだ」と振り返った。


「コーチ、先生にでもなれば? 教え方うまいって、みんな言ってるよ」


「……えっ」

「じゃ。デート行ってきまーす」

 プシュー、とドアが閉まる。

「…………」

 なかなか嬉しい言葉を残して、彼は去っていってしまった。

 ホームに一人佇む僕の足元には、いつの間にか秋の柔らかな陽だまりが落ちていた。
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