アースシールド♾️〜地球を守る天才少女は「好き」をまだ知らない〜

プロローグ

 私は、忘れることができない人間だ。
 初めて自覚したのは、3歳と7か月。
 母が読んでくれた絵本。
 ページをめくる音。
 15時22分、カーテン越しの光。
 すべて、今も同じ解像度で再生できる。
 人は「覚えている」と言うけれど、私の場合は保存だ。
(上書き不可、削除不可、改変不可)
 必要なときに、必要なだけ取り出せる「記憶」。
 感情も、音も、匂いも、配置も。
 だから、迷うことがない。
 選択肢は、すでに過去に存在しているからだ。
 小学校に上がる前から、大人たちの会話を正確に繰り返すことができた。

「どうして覚えてるの?」
「すごいね」

 そう言われるたび、首をかしげた。

 ――世界は危険。
 それを知ったのは、5歳のとき。
(第一次宇宙大戦の戦死者数8000万人以上)
 ニュースの映像や防空警報。
 目と耳から入る情報全てが私の脳に蓄積された。
 そう、この戦争で父と母が死んだ。
 忘れたい過去も忘れることができない。
 だから決めた。
 この「記憶」を武器に、父と母のように地球を守るのだとーー。
 感情に流されず、恐怖で判断を誤らないように。
 過去の失敗を、二度と繰り返さないように。
 人は、経験で強くなるという。
 私は、記憶で強くなるのだ。
 教本、訓練映像、過去の戦闘ログ等の記憶。
 ――これは、私だけに与えられた、スキル。
< 1 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop