第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
廊下を進んでいると――

「……あ」

聞き覚えのある声がして、角の向こうから人影が現れた。

「お嬢さん!」

次の瞬間。

どさどさっ!

レオの腕に抱えられていた袋が破れ、
中から大量のジャガイモが床を転がった。

「うわっ、あっ、ちょっ――」

ごろごろと転がるそれらを完全に無視して、
レオは私を見つめる。

目を大きく見開いたまま、息を詰めて――

「……起きたんですね」

震えた声。

「ほんと……ほんとによかった……」

そう言ったきり、言葉が詰まる。

次の瞬間、勢いよく距離を詰めてきた。

「だ、抱きしめていいですか!?
いいですよね!? 今しかないですよね!?」

「え、ちょ――」

「うん」

私がそう答えると、

その背後でユウリとディランが、ほぼ同時に一歩下がった。

まるで示し合わせたかのように。

次の瞬間――

ぎゅっ!!!

大きな腕に包み込まれ、視界が一気に布地で塞がれる。

「本当……よかったよぉ……!」

レオの声は完全に泣いていた。

「目ぇ覚まさないって聞いて……
俺、料理しながらずっと祈ってたんですよ……!」

背中をぽんぽんと叩きながら、私は少し息苦しそうに言う。

「れ、レオ……ちょっと、近い……」

「生きててよかったぁぁ……!」
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