第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
地下第三研究通路。

照明は半分が沈黙し、非常灯だけが赤く点滅している。

「……嫌な気配だね」

テオが言うとレオが鼻をひくつかせた。

「ここ、空気が腐ってる感じする!」

「魔女の雫の残滓だ」

レイは淡々と答え、床に散らばる黒い結晶片を拾い上げる。

「長時間吸えば、正気を保てない」

「つまり、長居は無用ってことね」

テオが肩をすくめた、その時だった。

――カツン。

奥の通路から、靴音。

ゆっくりと、わざと聞かせるような足取り。

「……来る」

レイが剣に手をかける。

闇の中から現れたのは――
顔を深くフードで隠した長身の男。右頬に傷がある。

魔女の雫事件で、宝石をばら撒いていた人物。

黒いローブの内側からは、歪に埋め込まれた魔女の雫の魔導装置が覗いていた。

「……おいおい。
もうここまで進入者が来てるのか」

低く、かすれた声。
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