第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「正直に言うとね」

ディランは少し視線を落とした。

「俺は、この瞳が好きじゃなかった。……いや、憎んでいたと言ってもいい」

胸が、きゅっと締めつけられる。

「王族の証だ、期待だ、役割だって。
この瞳を見るたびに、逃げられないものを突きつけられている気がしてね」

私は何も言えず、ただ彼を見つめる。

(私の知らないところで、この人はどれだけのものを背負ってきたんだろう)

「でも――」
ディランは顔を上げ、まっすぐ私を見る。

「君が言ったんだ。
“唯一無二で、かっこいい”って」

その言葉を思い出すように、少し照れた笑みを浮かべる。

「だからね……少しだけ、この容姿も、この瞳も、好きになれた」

夕暮れの光が、彼の瞳をやさしく照らす。
その色は、まるでアレキサンドライトのように、静かに揺れていた。


私の耳元で揺れるピアスに目をやり、少し笑みを浮かべるディラン。

「その耳に揺れるピアス……それは誰からもらったんだい?」

「えっと……セナです」
少し照れながら答える。

ディランは少し儚げに笑いながら言う。

「そうだと思った。少しジェラシーを感じたけど……でも君によく似合っている。まるで夜明けの空みたいだ」

「ありがとうございます。私も気に入っているんです」

私は柔らかく微笑むが、心の奥では、ディランの視線や言葉に、なぜか胸の奥がざわつくのを感じていた。


そしてディランは静かに輝く指輪を取り出す。
「なら、この指輪も受け取ってくれるかい」

夕暮れの光が指輪に反射し、オレンジ色の光が2人の手を包み込む。
私は戸惑いながらも手を伸ばす。
ディランはそっと私の指にはめ、指輪がきらりと輝いた。
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