第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「ち、ちが……っ
あの、それは……!」

しどろもどろになる私を、
ディランは面白そうに眺める。

「安心して」

「何もしていない」

……言い方が、ずるい。

「ちゃんと、
君が眠るのを見守っていただけだ」

「……見守るって……」

「看病とも言うね。ただ…」

くすっと、余裕の笑み。

「口を開けてヨダレが垂れていたよ」

「っ!?」

慌てて口元を拭う。

「冗談だ」

……むかっ。

「でも」

少し声を落として、

「熱で甘えた君は、
なかなかに貴重だったよ」

「――っ!!」

完全に布団を引き上げる。

「わ、忘れてください!!」

「それは無理だな」

即答。

「~~~っ!!」

「ティアナ」

布団越しに、
優しく名前を呼ばれる。

「……なに?」

小さく返すと、
彼は少しだけ表情を和らげた。

「熱は下がっている」

「今日は、無理をしない」

「わかったね?」

……昨夜と同じ。

優しくて、
逃げ場のない声音。

「……はい」

そう答えると、
満足そうに頷いた。

「いい子だ」

……その一言で、
胸がまた、うるさくなる。

ディランは立ち上がり、
窓を少し開けた。

朝の風が、
静かに部屋へ流れ込む。

「朝食は、アリスが用意している」

「あとで皆にも顔を見せてあげて」

「心配していたからね」

「……うん」

そして、振り返る。

「ちなみに――」

少しだけ、
悪戯っぽく。

「弱っている君は、特別可愛すぎだよ。
昨日の君は 俺だけのものだ」


……何をいってるんだ、本当に。

顔が熱いのは、
もう、熱なんかじゃない。
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