傷ついた天使の使いは教師である僕を殺す

僕は犯人じゃない!!


         ❄

卒業式の最中の10時半頃。


最悪の卒業式だった。


ーー傷跡のない半裸の女子高校生が鏡の前の踊り場で横たわって絶命しているーー


それを知ったのは、犯行から1時間たった後だった。


僕の元生徒であった「海音里奈」が殺されたのだ。


警察がすぐさま出動して、一ヶ月後になっても中々事件は進展しない。


里奈と仲が良かった僕。


火花優は、現代文教師であり男性である。


男性であるからなのか、里奈と恋仲になっていると学校で噂されてる。


付き合っていないのにーー。


それが、よくなかったみたいだ。


そして今、教室で水をかけられて、いじめを受けている真っ最中。


ケタケタと笑う生徒達は、僕の心をズタボロにしている事を、無知故に知らないんだろう。



あれから一ヶ月だ。


生徒達には申し訳ないが、実は僕は犯人ではない。



アリバイとして、犯行時刻の時に校長が僕のことを卒業式の式典に見ていたと証言しているから。



それに、僕は実際、里奈のことを殺している記憶もない。



寧ろ、彼女の事を尊敬していたぐらいだから、恨みもないし殺す、理由もないはずだ。




パンッと弾けるような音が、空気を伝って響いた。



生徒達が後ろを向いて、僕はまっすぐ見据える。



スラリとした、黒髪ウェーブに真っ赤なルージュを指した「海音ナズナ」が手を叩いてニンマリしてた。



「姉さんを殺した犯人さんだっけ?


ずぶ濡れでいい男に変わったんじゃない?


そのまま死んで、姉さんにあってきなよ」





と僕は笑われて、ホームルームが鳴る。



クラスメイトたちはダラダラと別の席に出向いて、どこかに行ってしまう。



「何故止めないんだ?」



と颯爽と現れた、福本栄一先生が現れた。


黒いメガネと短髪を催した、鋭い二重の目つきは僕の全てを見透かしているかのようで。



「彼らが自分のしたことを、大人になって後悔するようにーーやり返さないんです」



と笑顔で話した。




僕は、それ以上の言葉は出てこなかった。





「福本栄一先生は何をしてるんですか?」




と、僕は訪ねた。



福本栄一先生は、副担任の先生ではないからここにいるのはおかしいと思ったから。




でも……、予想外の答えが出てきて。



「俺と、ナズナの姉を殺した犯人を探してほしい」



って、話が出てきた。



僕はびっくりして、「僕じゃない!!」と答えた。




「見れば分かる」と、即答されたが。




「なんで犯人を探そうと思ったんですか?」と尋ねると。



福本先生は、「殺した犯人を見てみたいから?」と答えた。




「とにかく、お前も不憫だろ?



ナズナにいじめられるのは」



と手を差し伸べてきた。



左手。



「いいえ。


僕は、実は恨んでなんて居ないんですよ……」



と、その手を優しくつかんで。




「僕は……彼女が、お姉さん思いの優しい人だったって信じることができるんです。



だって、僕をこうしてナズナが虐めているのは、お姉さんの思いを背負ってぶつけてるって思うから……。


そうじゃなきゃ、ここまで人の怒りを買うことは無いって思うから。


僕は、姉思いの優しい人なんだなってしか、思わないんです」


「なら……どうして、協力するんだ?」



「僕は、優しさを履き違えたりしませんから。

警察が僕の家に来て、1週間後に捜査を打ち切る話を、持ち込んできたんです。


その時に今日絶対に、探し出してやろうって思って……決心がついた証拠です。



タイミングが良かったんです」




「そうか、それならよかった。


話が速い。


なら早速、お前は外に出向いてくれ」



「え?」



「ナズナが整備のおじさんを虐めて、これないんだ。


裏事情を知ってるのは、清掃員の人間だろ?


ほら行ってこい」




「今すぐですか!?」



「着替えなしでとは言ってない。


買ってこいよ、洋服は。


自分で」



そんなぁ……。







早速ピンポンを鳴らして、出向いた先に整備員のおじさんがいた。



福本先生に話を聞いてよかった……。


駅先のプリンを買ったら、グチョグチョになっていた。



「ご……ごめんなさい」



「お前さん、やっぱりーーナズナさんの手先なのか?」


一瞬言われた意味が理解し難く、止まっていたらガチャリと扉を閉められた。



「ち……違いますよ!!


僕は……寧ろいじめられてます!!


大いに、水を吹っ掛けられていた形跡もーーー今はないけど、観察してたら見れますよ!!」



扉を開いてくれたが、鼻先にぶつかってガッとぶつける。



「合格だ」



と、案内されたマンションの一角。




部屋は端正なものばかりで、惚れ惚れとあたりを見渡しても害はないぐらい、きれい。



「ええっと、事件当時何をしていましたか?

掃除ですか?

あと、盆栽の手入れとか花壇の整備とか」



「もっと他に聞くことないのか……。

あの日は、雨だっただろ?


仕事を早くきり上げて、休んでたよ。

家で」




「アリバイの証人はいないということですか?」



「いや、妻がいる。


妻との連絡を取ったわけで、連絡履歴が1時間ぐらいあるから犯人じゃない。



GPS機能で、場所もわかるから……嘘じゃない」





「じゃあ、変わったことは?」




「変わったこと……」



暫く、清掃員の人は手をぽんと叩いて。



「コーンを置いていなかったよ」




「コーン……?


ですか?」



「行き止まりの目印になるコーン。


事件当時には、入ったらいけないってコーンがあったんだろ?」



あぁ、そう言えば。


「そのコーンが無かったってことは、誰かが置いたってことですね!!」




「なぁ、兄ちゃん……これは、本当に他殺なのかい?」



と、顔を覗き込まれた。



「それを……いま、僕は調べてるんです……。



ずっと、心の奥底でおかしいと思っていたので」



「そうだよな……。

あんな明るい見るからに恨まれてなさそうなお嬢ちゃんが死ぬなんてーー俺は考えられねぇ」



ガサゴソと後ろから、何かを取り出してきた。



なんだろうと思って、暫くまつとそこにはーーー。


「これ、データのやつだ」


と、プラスチックのusbを差し出してきた。


「ぼ……防犯カメラの映像のデータですか……?」



と困惑していると。



「俺、こう見えてこの学校の警備員と仲が良くて。


この学校は明らかに、他殺な殺人事件がおこってんのにーー教師であるお前さんのいじめを隠蔽してるのもおかしいし、校長ってのが派遣社員の俺に対して意地悪だからよ。


仕返しってやつだ」





「仕返し……これがですか?」




「学校が隠蔽できないように、自ら証拠が掴めるように細工したってこと。


校長はそれぐらい、頭のネジが狂ってるからな」


と、パソコンに繋いでーーー事件前の1個前の防犯カメラの映像を見た。


今は修復中で、これしか見れないんだと。



里奈が目先の向こう側からこっちへキョロキョロしながら、だんだん近づいてくる。


そして、よく見ると事件の日と殺される十分前の動画。



胸元を見ると、赤い作り物の薔薇が刺されているのを見て卒業式の最中に里奈が出たことを示している。


「……何だか、挙動不審ですね。


顔も、強張ってる」




「これが、自殺するやつの顔だろうかな……兄ちゃん……。


あ、そう言えばこの動画を見て思い出したんだが、この動画の1時間前。


俺が渡り廊下の掃除をしようとした時、滑り止めがぜーんぶ使われてて、びっくりしたよ」


「滑り止めがなくなっていたんですか?


液体のということですか?」




「そうそう。


んで、これがもし誰かが使ってたんだとしたらーーー身内ってことになんねぇーかなって」



僕は、ゴクリと喉を鳴らす。


< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop