隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません



 バルトが帰り、ダリオスとセイラは二人きりになる。

「本当にあれでよかったのか」
「え?」

 ぽつり、と静かにダリオスが呟く。その呟きにセイラが首をかしげると、ダリオスは真剣な眼差しでセイラを見つめた。

「いくらポリウスでそうしていたからと言って、ここでも同じようにする必要はないんだ。自ら危ない目に遭わない選択肢だってあるだろう。君のようなか弱い女性を危険な場所へ連れて行こうとするなんて、騎士団長もどうかしている」

(ダリオス様、契約結婚なのに私のことを心配してくださってる。とてもお優しい方なのね)

 少し驚いた顔をしながら、セイラはダリオスを見つめ、口を開いた。

「心配してくださって、ありがとうございます。でも、本当に大丈夫です。ポリウスにいた頃、本当に悲惨で……命の危険を感じるような場所にも何度も足を運んでいます。ですから、そこまで心配していただかなくても大丈夫ですよ。それに、私は聖女です。どこにいたとしても、聖女としての役目を果たすのは私の責務です。ですから、どうか行かせてください。皆さんの足手まといにならないよう気をつけますので」

 しっかりとした口調でセイラは言う。その眼差しには強い思いが感じられ、ダリオスは息を呑む。

「……わかった。君のことは俺が何に代えても全力で守ると約束しよう」
「ありがとうございます。ダリオス様は本当にお優しい方ですね」

 フワッと花が綻ぶような微笑みを向けられ、ダリオスの心臓は跳ね上がった。

「いや、君はこの国で大事な聖女だ。守るのは当然だろう」

 思わず視線を逸らしてそういうダリオスを見て、セイラの心はなぜかチクリ、と痛む。

(どうして胸が痛むのかしら……。ダリオス様が私を聖女として守ると言ってくださるのはありがたいことなのに。私は、ただここで自分の責務を全うするだけ。私がここで生きる術はそれしかないのだから)

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