隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
 ダリオスがそう言うと、セイラはパッと目を輝かせ安心したようにほうっと息を吐く。

「……だが、だからと言ってユリア嬢を許すわけではない。彼女が今回したことは、俺にとっては本当に許されないことだ。俺の最愛の妻の心を傷つけ、俺たちを引き離そうとしたんだ。そしてそれは事実だ」

 はっきりと言い切るダリオスに、セイラはハッとしてからうつむいた。

(それは、確かにそうだわ。ダリオス様は、それとこれとは別だとおっしゃりたいのよね)

「それにしても、セイラはユリア嬢に対して怒りを感じたりはしないのか?私たちの仲を引き離そうとするなんて、って怒っても良いくらいなのに。むしろ、俺は怒ってくれないセイラにちょっと物足りなさを感じてしまう」

(も、物足りなさ!?)

 寂しげにそう言うダリオスを見ながら、セイラは目をパチクリさせ、うーんと考え込む。

「怒る、というよりも、最初はショックの方が大きかったです、ね。それも、ユリア様に対してというよりも、ユリア様のことを知らなかった自分に対してのショックでしたし」

 首をかしげながらそう言うセイラを見て、ダリオスは思わずセイラの手をきゅっと握りしめる。

「でも、そもそもダリオス様とユリア様の間には何もなかったということがわかったらホッとしました。あとは、そうですね……」

 ぼんやりと宙を眺めながら何かに気づいてセイラはダリオスを見つめる。

「私がダリオス様を好きになるよりもずっと前に、ダリオス様を好きになった方がいたことがなんとなくショックでした。でも、こんなにも素敵なダリオス様がモテるのは、当たり前のことなのに、そんな風に思ってしまうなんておかしいですよね。それに、隣国から突然やって来たような私がそんなこと思うなんて、ダリオス様を好きになった方々に対して失礼だなと思いました」

 困ったようにそう言って微笑むセイラを、ダリオスは両目を見開いて見つめる。そして、急にセイラへ抱きついた。

「えっ!?ダリオス様!?」
「そんなこと言うのは卑怯だろう……なんでそんなに君は……ああ、もう、屋敷についたら覚悟してくれよ。セイラへの思いが溢れて止まらない」



(えっ!?ええっ!?)

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