隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
 アレクの言葉に、ダリオスとセイラは同時に声を上げる。アルバートもクレアもバルトも皆驚いているが、国王は細い目をさらに細くしてアレクを見た。

「ポリウスの聖女はそもそもポリウスの王女なのでしょう。ポリウスがレインダムの領地になったのなら、その王女とレインダムの第一王子である俺が結婚するのが筋だと思いますが」
「それはならぬ、ダリオスとセイラはすでに夫婦として絆を結んでおる。お前の付け入る隙は無い。そもそも、ポリウスがレインダムの領地になったのだ、わざわざ政略結婚する必要もない」
「へえ、あの騎士道一筋のダリオスが、きちんと夫婦をしているのか?信じられない。ますます聖女に興味がわいてきたな。そんなに魅力的なのか?ダリオス、俺に一晩その聖女を貸してくれないか」
「アレク!いい加減にしろ!」

 アルバートが声を荒げると、アレクは肩を窄めて舌を出す。そんな二人を見て、国王は大きくため息をついた。

(アレク様はこれで本当に第一王子なの?それに、アルバート様とは仲があまりよろしくない?)

「ダリオス、アレクがすまない。冗談でも言っていいことと悪いことがある。それから、聖女セイラ。あなたにも不快な思いをさせたことを詫びる」
「い、いえそんな……」

(アルバート様は何も悪くないのに、アレク様の代わりにわざわざ謝罪してくださるなんて。第二王子としてアレク様を支えていらっしゃるのね)

 驚きつつも感心してアルバートを見ていると、ダリオスが机の下でそっとセイラの手を握った。セイラが驚いてダリオスを横目で見ると、ダリオスは目を合わせず机を見つめているが、握る手の力が強くなる。まるで自分はここにいるとセイラに伝えているかのようだ。

「アレクよ、いい加減にしないか。お前のせいで会議が進まん」
「これはこれは申し訳ありません。それで、何を話し合うのでした?」

 アレクの言葉に、国王はまた大きくため息をついた。

「正式にポリウスがレインダムの領地になったのだ、ポリウスの国王とセイラの妹君、つまりもう一人の聖女ルシアの処罰についてだ」

(お父様とルシアの処罰……ダリオス様とクレア様に刃を向けたのだから、お父様はきっと処刑を免れないわ。ルシアも、随分と失礼な態度を取ったのだし、聖女の力がない以上、どんな処罰になるか……)

 セイラが不安そうに俯き瞳を揺らすと、ダリオスはセイラを見て辛そうな表情をする。そんな二人に開いているのかわからないほど細い目を向けて国王は口を開いた。


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