隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません



 ダリオスの屋敷に帰ってきてすぐ、セイラはダリオスの部屋に通されてソファに座らされた。ダリオスは当然のようにセイラの隣に座り、セイラの手をただひたすらに握っている。

(ダリオス様、なんだか少し不満げな様子だけど、どうなさったのかしら?)

「ダリオス様?」

 セイラがダリオスをじっと見つめると、ダリオスはセイラの視線に気づいて見つめ返す。それから、はあーっと小さくため息をついた。

「どうかなさったのですか?」
「……いずれセイラが単独でポリウスに行くことが心配でならないんだ」

 ダリオスが深刻な表情と声音で言うと、セイラは少し驚いてしまう。

「でも、ルルゥも一緒ですよ?それに、浄化をする場所には恐らくポリウスの騎士たちも同行するはずです」

 浄化が必要な場所には魔獣も多く、必然的に騎士団が護衛することになるだろう。特に心配することは何もないのに、とセイラは思う。だが、ダリオスは眉を盛大に顰めた。

「セイラのことを守るのは俺だけで十分だ。誰よりも、俺がセイラを守りたい。だけど、一緒に行けないだなんて……」

 きゅっとセイラの手を掴んだ自分の手に力を入れる。

「俺のわがままなのはわかってる。でも、俺のいないところでセイラの身に何かあったらと思うといてもたってもいられないんだ。どうにかして、セイラがポリウスに行く時には俺も一緒に行けるようにしてみせるよ」

(ダリオス様ったら、そんなことを考えていたのね……!)

 ダリオスの気持ちはとても嬉しいが、ダリオスにはダリオスの大事な仕事がある。レインダム最強の騎士であり、国王からの信頼も厚く、重要な会議や話し合いにはよく駆り出されるようだ。

「ダリオス様、気持ちはとても嬉しいですけれど、どうかご自分の仕事を犠牲にすることだけはおやめくださいね。ダリオス様はレインダムにとって大事な騎士です。それに、ダリオス様はレインダムの騎士として誇りを持っているとおっしゃっていたではないですか。私は、そんなダリオス様だからこそ尊敬し、心から好きだと思ったんですよ」

 首を少し傾げ、諭すように言うセイラを見て、ダリオスはぐっと喉を鳴らす。そして、また小さくため息をついた。

「セイラには敵わないな。わかったよ。仕事を投げ出すようなことは絶対にしない。でも、できるだけセイラのそばにいられるようにするし、セイラが単独でポリウスに行く時にはクレアに頼んでセイラに守護の魔法を何重にもかけてもらうようにする」

(そ、そんなに?ダリオス様ったら、過保護なんだから)

 ダリオスの言葉にセイラは驚くが、すぐにくすくすと嬉しそうに笑う。

「ありがとうございます。心強いです」

 セイラの返事を聞いて、ダリオスは満足げな顔をしてからセイラの頬にちゅっと軽くキスをする。そのまま、顔のあちこちや首筋にキスを落とし続けていく。

「ダリオス様ったら、くすぐったい」

 セイラが可愛い声でそういうと、ダリオスはキスをやめて至近距離でセイラをじっと見つめた。その瞳にはゆらゆらと熱い欲が揺らめいている。

「ここのところ会議続きでなんだか疲れたな。セイラで充電しないと持ちそうにない」

 そう言って、ダリオスはセイラをソファにそっと押し倒した。

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