隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
「ありがとう。それじゃセイラ、行こうか」
「あっ、はい」

(ガイズ、なんだか暗い顔をしているけれど大丈夫かしら?)

 ふとガイズを見ると、見たこともないような暗い表情をしている。ガイズとはポリウスにいた頃、何度も一緒に行動を共にしてきたが、あんな表情をしているのは初めてだ。セイラはなんとなく不安になり、ガイズの元へ駆け寄る。

「ガイズ、昨日のことはどうか気にしないでください。私はあなたがとても優秀な騎士だと言うことを知っているし、私だけでなくみんなそれをわかっている。それに、私は今までだって何度もあなたに助けられました。ポリウスだって、あなたがいてこそだもの。これからも、どうか国と民のために力を貸してください」
「セイラ様……!」

 セイラの言葉を聞いて、ガイズの表情がだんだんと和らぐ。そして、瞳には光が宿り、ガイズはしっかりとセイラを見つめた。

「セイラ様、勿体無いお言葉です。このガイズ、これからもあなたと国にこの身を捧げる所存です」

 ガイズが胸に手を当ててそう言うと、後ろにいた他の騎士たちも揃って胸に手を当てる。ルルゥも、嬉しそうに微笑んでいた。

「ありがとう、それじゃ行って来ます」
「行ってらっしゃい!」

 セイラはガイズたちに微笑んで手を振ると、ダリオスのそばに駆け寄る。ダリオスはフッと微笑んでからセイラの腰に手を回し、一言呟いた。

「君には本当に敵わないな」
「……?」



 こうして浄化が必要な場所に転移したセイラたちだったが、昨日とは違い異常な魔獣も出ることなく、浄化は滞りなく行われ、二人は無事に城に帰還した。

「特に問題なく終わってよかったですね」
「ああ、とりあえずは目的地の三か所全てを浄化することができた。今日中にレインダムへ戻ろう」
「それなら、ルルゥに挨拶をしてきますね」
「わかった、俺もガイズ殿に今日の報告をしてくる」

 セイラと別れて、ダリオスは城の中を歩く。すると、前方に見慣れた顔がいてダリオスは驚く。

(あれは、アレク殿下……なぜここに?それに、話している相手は、ガイズ殿か?)

 二人の姿を見て、思わずダリオスは柱の陰に隠れる。どうして、レインダムの第一王子であるアレクが元ポリウスに来ているのだろうか。それに、なぜ元ポリウスの騎士団長であるガイズと話をしているのか。
 距離があって二人の話は聞こえない。だが、近づきすぎても二人に見つかる可能性がある。どうしたものかと考えていると、二人はダリオスから離れ、近くの部屋に入っていく。
 部屋の扉が閉まると、カシャン、と鍵がかかる音がした。第一王子と敵国だった騎士団長が二人きりで閉じこもるなんて危ないにも程がある。
 だが、何よりもアレクが元ポリウスにいること自体、嫌な予感しかしない。もしかすると、アレクは何か企んでいるのではないか。
 
 ダリオスは厳しい表情で踵を返し、急いで廊下を歩いていった。

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