第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「……そうじゃなくてさ」
ラピスラズリを胸に抱いたまま、ぽつりと漏れる声は、どこか震えていた。
「何か、気になることでも?」
アリスが問いかける。穏やかな声なのに、部屋の空気がわずかに揺れた気がした。
「ジョルジュ陛下の……
ディランを見る目」
言葉を探しながら、ゆっくり続ける。
「あれ、孫を見る目じゃなかった」
「次期国王として、厳しく見ている……というわけではなく?」
アリスが小首をかしげる。その無邪気さが、逆に胸をざわつかせた。
「うん……」
首を振ると、背筋に冷たいものが走る。
「もっと……奥が冷える感じ」
「感情があるようで、ないというか……」
脳裏に、ふと浮かぶ。
——あのときのガイル。
「……ガイルが、私に向けた目と、同じだった」
アリスの表情が、すっと変わった。
まるで、薄い膜が剥がれ落ちたように。
「……それは」
慎重に、しかし逃げ場を与えない声音で言う。
「“器”として見ていた、ということですか?」
「……うん」
けれど、すぐに弱々しく付け足す。
「ただの、気のせいかもしれないけど」
「……いいえ」
アリスは即座に否定した。
その声は、いつになく低く、静かだった。
「お嬢様の勘は、今まで一度も外れたことがありません」
「……そう、かな」
「はい」
断言。
その瞬間、部屋の温度が一度下がったように感じた。
「少し、調べてみましょうか」
アリスの瞳は、もう侍女のそれではなかった。
一瞬、迷う。
「……うん」
でも、すぐに続ける。
「ただし、気をつけて」
「もちろんです」
アリスは深く一礼した。
その所作は美しいのに、どこか“戦いに向かう者”の気配があった。
ラピスラズリを胸に抱いたまま、ぽつりと漏れる声は、どこか震えていた。
「何か、気になることでも?」
アリスが問いかける。穏やかな声なのに、部屋の空気がわずかに揺れた気がした。
「ジョルジュ陛下の……
ディランを見る目」
言葉を探しながら、ゆっくり続ける。
「あれ、孫を見る目じゃなかった」
「次期国王として、厳しく見ている……というわけではなく?」
アリスが小首をかしげる。その無邪気さが、逆に胸をざわつかせた。
「うん……」
首を振ると、背筋に冷たいものが走る。
「もっと……奥が冷える感じ」
「感情があるようで、ないというか……」
脳裏に、ふと浮かぶ。
——あのときのガイル。
「……ガイルが、私に向けた目と、同じだった」
アリスの表情が、すっと変わった。
まるで、薄い膜が剥がれ落ちたように。
「……それは」
慎重に、しかし逃げ場を与えない声音で言う。
「“器”として見ていた、ということですか?」
「……うん」
けれど、すぐに弱々しく付け足す。
「ただの、気のせいかもしれないけど」
「……いいえ」
アリスは即座に否定した。
その声は、いつになく低く、静かだった。
「お嬢様の勘は、今まで一度も外れたことがありません」
「……そう、かな」
「はい」
断言。
その瞬間、部屋の温度が一度下がったように感じた。
「少し、調べてみましょうか」
アリスの瞳は、もう侍女のそれではなかった。
一瞬、迷う。
「……うん」
でも、すぐに続ける。
「ただし、気をつけて」
「もちろんです」
アリスは深く一礼した。
その所作は美しいのに、どこか“戦いに向かう者”の気配があった。