第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
馬車に揺られて約1時間半。
広大な敷地に建つ別荘が見えてきた。

「……相変わらず、広い別荘ですね」

「気に入ってくれたなら嬉しい。さあ、中へ」

案内されたのは、手入れの行き届いたガーデン。
朝露に濡れた花々がきらきら光っている。

「まずは……ここで食事にしようか」

テーブルにはすでに食事が並べられていた。
使用人たちが一礼して下がると、庭は一気に静けさを取り戻す。

二人きり。

「……いただこう」

「はい。いただきます」

鳥のさえずり、風に揺れる葉の音。
それだけが響く、穏やかな時間。

(こんなデートも、悪くない)

自然と頬が緩む。

食事を進めながら、ディランがふと尋ねる。

「そういえば、ティアナ。嫌いな食べ物とかはある? 逆に、好きなものは?」

「そうですね……苦手なのは、パクチーですかね。正直、あれはよくわからないです」

「……少し、わかるな。不思議な味だ」

「でも、甘いものは好きです! それに、基本レオの作るものは何でもおいしくて。いつも、つい食べすぎてしまいます」

「確かに。彼の作る料理は、妙に人を油断させる」

ディランは少し考えるように顎に手を当てた。

「……覚えておこう」

「何をですか?」

「君がパクチーを嫌いで、甘いものが好きだということ」

さらりと、当たり前のように言う。

「そんなの、覚えなくても……」

「大事なことだ」

即答だった。

その真っ直ぐさに、胸の奥がじんわり熱くなる。
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