完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
振り返ると、花音が俺のジャケットを掴んだままだった。
「あっ……す、すみません……」
「いや……花音さんはまだここで休んでていいから」
「……はい」
高野が室内に入り、花音の側に寄る。
「花音様、お体の調子はいかがでしょうか」
「大丈夫、だいぶマシになったみたい……」
花音のその言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。
まだ少し顔色は悪いが、さっきよりは落ち着いている。
俺は振り返り、安心させるように笑顔で言った。
「ではまた後ほど」
「はい……」
その返事を聞き、俺は控え室を出た。
会場へ戻ると、視線が一斉にこちらへ向く。
まだ多くの招待客が残っていた。
俺はそのまま壇上へ上がる。
マイクの前に立つと、会場のざわめきが静まった。
「本日はお忙しい中、私たちの婚約披露の席にお越しいただき、ありがとうございます」
形式通りの言葉を並べる。
正直、こういう場は好きじゃない。
だが今日は――
花音が必死に準備していた。
それくらいは、きちんとやるべきだ。
「花音さんは体調不良のため挨拶は控えさせていただきます」
その途端、会場がざわついたのがわかった。