完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


「要も酷いわ、花音さんがせっかく作ってくれたのに」

そう言って、優しく微笑んだ。

その表情が、あまりにも自然で。

……本当に、いい人なんだなって思ってしまう。

「あの……今日はどうしてこちらにいらしてたんですか?」

「新聞の件でね……ほら、私も記事に載ったでしょ?」

新聞の写真を思い出し、また落ち込んでしまう。

「ごめんなさい、あんな風に書かれてしまって」

〝密会〟のことだよね……

「いえ……」

「変な人たちに絡まれてね」

「やっぱり要さんが殴ったんでしょうか……?」

「ちょっと派手にやりすぎてしまったけど、要が悪いわけじゃないのよ」

それはわかってる。

要さんがワケもなく殴るはずないから。

志乃さんを守ったんだよね……

「要のこと、誤解しないでちょうだいね?」

「はい……」

なんであの時二人でいたのか、聞きたいけど怖くて。

「ケーキ、いただいてもいいかしら?」

「あ、はいっ」

ナイフを入れる手が、少しだけ震えた。

一切れをお皿にのせて、差し出す。

志乃さんはゆっくりと一口食べて……

「……美味しいわ」

迷いのない声だった。

お世辞じゃないって、分かる。

「本当ですか……?」

思わず、聞き返してしまう。

「ええ。ちゃんと丁寧に作られてる味がする」

「……ありがとうございます」

小さくそう言うと、志乃さんはふっと視線を和らげた。

< 159 / 252 >

この作品をシェア

pagetop