完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
指輪の持ち主
相沢さんの料理レッスンの後、私は一人厨房に残っていた。
それは、この前志乃さんに聞いたミートパイを作るため。
今日は相沢さんに手伝ってもらわず、一人で挑戦しようとしていた。
スマホのレシピに目を落とす。
志乃さんが言っていた。
――要はお母様が作ってくださった、ミートパイが好きだった、と。
その味と同じにはならないだろうけど……喜んでくれるといいな。
エプロンの紐を結び直し、深く息を吸った。
「よし……頑張ろう」
ひき肉を炒めて、玉ねぎを刻んで。
慣れない手つきながらも、一つ一つ丁寧に進めていく。
途中、何度も味見をしては首をかしげて。
これで……合ってるのかな?
不安になりながらも、それでも手は止めなかった。
――要さんに、食べてほしい。
その気持ちだけで、なんとか形にしていく。
パイ生地に具を包み、オーブンへ入れる。
扉を閉めた瞬間、ふうっと息を吐いた。
「……あとは、焼けるのを待つだけ」
静かな厨房に、機械音だけが響く。
その間も、落ち着かなくて。
ケーキはいらないって言われたのに……しつこいかな。
また昨日みたいな反応だったらどうしよう。